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027 ペンテの戦いと早すぎる完成

本日3回目の投稿です。

 一章 十六話


 ペンテの周りには、100体以上の賢魔鳥(けんまちょう)達が集まり、伏せている。


 翼とくちばしを空に向けて動かないでいたペンテがまるで「時は満ちた」というような雰囲気で、ゆっくりと翼を横に広げてから畳むと、


「ピロピロピロ」


と3回鳴いた。すると、いままで伏せていた100体の賢魔鳥達が一斉に立ち上がりくるりとその場で回れ右をした。


「ピロー ピィ」


 その合図で、一斉に走り出した。


 エッ なに、もしかして今の「よーいドン」なの


 私がポカンとしていると、隣で見守っていたサクラさんが呟いた。


「鬼ごっこ、始まりましたね。そろそろ、ペンテに勝てる子が出てくるといいのですが」


「あれ、鬼ごっこなんですか。かけっこかと思いましたよ」


「うちもそう思った」


 シンティさんも初めて見たようだ。


「勝負を呼びかけた賢魔鳥が鬼になるんです。そして、しばらく待ってから追いかけていくんです。ここ10年ぐらいは、ペンテが鬼ですね」


「あの数全部をつかまえるんですか。大変なんじゃないですか」


「大丈夫です。ペンテに追い抜かれたらそこで失格です」


「やっぱりかけっこね」


 シンティさん、こだわってますね。


 そんな話をしている内に、ペンテが、ものすごい速さで逃げている賢魔鳥達を追いかけ始めた。


 一番最後の走者でさえ、すでに豆粒になっている。本当に追いつけるのだろうか。


 ペンテがあっという間にごま粒になっていた。豆粒達は、次々と逃げることを諦めて、その場にうずくまった。


 結局、最後まで逃げ切ったのは、3体のみだった。ペンテ恐るべし!




「すごい、3体残りましたね。今までは、この競争だけで勝負がついていたんです。強い個体が出てきました。今回は期待しても良さそうですね」


 サクラさんが、「よっし」と握りこぶしをしながら身を乗り出している。


「これで決着なんですか」


「いいえ、この後、バトルかくれんぼが始まるはずです」


 ん、バトルかくれんぼ……。なんだろ。サバイバルゲームみたいなやつのことかな。




 私が、迷彩服を着て、モデルガンで戦闘ごっこをしている人たちを思い浮かべていると、ペンテと残った3体の賢魔鳥達が丸くなり羽を横に広げたり上に上げ足りしながら踊り始めた。


 ゆっくりと踊りながら3回ほど回ったときに、ペンテが「ピロー ピロピロ」と鳴くと、3体の賢魔鳥達は一斉に森に向かって駆けだした。


 ペンテは、目をつぶって静かにたたずみ何かの音を探っているようだ。私も聴覚に身体強化を掛けて音を探してみる。


 なるほど、賢魔鳥達が移動している音が聞こえる。やがて、音が無くなりシンとした静寂が訪れた。




 ペンテが動いた。常に音の行方を探っていたのだろう。一番最初に音が止まった場所に一直線に向かっていった。


 1番目との勝負はあっさり決着がついた。ペンテが予測していた場所から動かず、ペンテが近づいてくるのにも気がつかなかったようだ。


 いきなり現れたペンテにびっくりして、バトルにもならなかった。経験不足だ。


「サクラさん、1番目がつかまったようですよ」


「カナデさんもペンテの動きが分かるんですね。私もなんとか追いかけています」


「うちは追うの諦めたわー」


 シンティさんは、そのままギンギツネ号の中に入ってしまった。




 2番目は、1番目が見つかった時に、すでに初めに居た場所から移動していた。


 この賢魔鳥は、ペンテの動きが見えているようだ。それなりにかくれる場所を移動しながら見つからないように粘っていたが、ペンテも、完全に居場所を把握していた。


 逃げ場がない場所に誘導され、戦わざるをえない状況に追い詰められた。そして、戦いではペンテの相手ではなかった。あっさり降参していた。




「2番目もつかまりましたね。でも、いい勝負はしてました」


「ええ、あれぐらいペンテと戦えるなら、新しい樹魔車両をひいてくれる子の候補にしてもいいですね」


 3番目は、気配を消すのがうまかった。ペンテも居場所を見失ったようだ。私も、聴覚だけの身体強化では居場所を探れなかった。


「3番目は、かくれるのがうまいですね。私は気配を見失いました」


「カナデさんもですか。私もです。なかなかやりますね。でも、このままではペンテの勝ちなんですよ。挑戦者は、ペンテの背中に飛び乗らなければ負けになるんです」


「なるほど、だからペンテは動かないんですね」


 ペンテは動かない。周囲に意識を集中させている。相手もすごい。移動音が全くしない。




 私は、感覚を神装力(しんそうりょく)第三権限貸与で強化した。空気の揺らぎを探るためだ。音は消せても、物体には体積があるので、動けば空気がゆらぐのだ。


 初めてこの森に転生し魔物に襲われ続けたときに、つくも(猫)がやっていたことを真似て覚えたのだ。




 かくれんぼ……というより『かんけり』みたいなバトルになてきた。ただ、タッチよりも背中に乗ることの方が数倍難しいが……。


 感覚を研ぎ澄ませていると、ペンテの後方20メートルぐらいの所に、大きな揺らぎができた。ペンテは気がついているのだろうか。


 周りの空気をゆっくりと揺らしながら、じりじりと近づいている。10メートル、5メートル、3メートルの所で止まった。




「プピー」


 突然悲鳴のような鳴き声と共に、小さな塊が飛び出してきた。兎型魔物『まちぼうけ』だ。ピリピリした空気に我慢できずに飛び出したようだ。


「ん……いないぞ」


 3番目がさっき居た場所から消えていた。


「ボワァ」ペンテの頭上1メートルほどの所に3番目が浮かんでいた。そのまま、ペンテの背中を狙っている。




(やられた)と思ったら、3番目のさらに1メートル上にいつの間にかペンテが浮かんでいて、そのまま3番目の背中に飛び乗ったのだ。


「ペンテの勝ちだ」


「えっ、見えてたんですか。私は見失ったまま探せませんでした。というか、ペンテが勝ったんですね。やりました」


 サクラさんがピョンピョン跳ねていた。




 ペンテは、3番目の背中に乗ったまま森の中から出てきた。いつの間にか集まった100体の賢魔鳥達が腹を地面につけた姿で待っている。


 ペンテは、翼を横に広げてから空に向かってピンと突き上げた。そして、


「ピロー ピロピロピロピロー」


と雄叫びのような鳴き声を上げた。




 100体の賢魔鳥達も立ち上がると、空に向かって「ピロー」と一斉に鳴いたのだった。きっと勝者をたたえているのだろう。


 ペンテが3番目の背中から降りて、「ピロッ」と鳴くと、100体の賢魔鳥達はバラバラになって森の草原に向かって走り去った。残ったのは、1番目、2番目、3番目だけだ。


 サクラさんが、3体に近づき、「仲間になってほしい」とお願いをすると、1番目と2番目は「クルクル」と鳴きながら頭をサクラさんにこすりつけ、了承の意を表した。


 3番目は、なぜか私をじっと見ていた。そして、「ピロ、ピロ、ピロ」と威嚇してきた。




「カナデさん、どうやら3番目はカナデさんと戦いたいみたいですよ」


 えっ、なにそれ……面倒くさい。


 私が、無視をしていると、3番目が私の背中に飛び乗ろうとしてきた。さらっと避けると、しつこく追いかけてくる。


 流石にイラッとしてきたので、勝負を受けてやることにした。


 勝負の方法は、ペンテの時と同じだった。




 サクラさんの「よーい ドン」で、3番目があっという間に豆粒になる。私は、神装力第三権限貸与の力で全身に身体強化を掛け、あっという間に砂粒になって3番目を追い越した。


 バトルかくれんぼでは、一瞬で3番目の背後に回り込み背中に抱きついた。そして、身体強化を掛けたまま、ものすごーくやさしく、おでこにデコピンをお見舞いしてやった。


 それ以来、3番目は私に逆らうことはなくなった。


「あら、この子かわいい」


 シンティさんは1番目が気に入ったらしい。背中に頬をあててスリスリしている。







 ペンテの戦いから、1ヶ月ほどが過ぎた。1番目、2番目、3番目は、賢魔鳥の牧場で、樹魔車両を引くための訓練を受けている。


 教官はペンテだ。なかなかの鬼教官である。それから、名前もついた。


 1番目が『テネリ』、2番目が『リタス』、3番目が『メガロ』だ。サクラさんから、私にも考えてほしいと言われたのだが、「ワン」「ツー」「スリー」で良くない。と提案したら、残念な顔をされてしまった。




 サクラさん専用の特別な樹魔車両の外側が完成した。制作期間は2ヶ月と3日だ。予定よりも1ヶ月近く早い完成になる。


 本当ならば、最速で3ヶ月、多分手直しも多く出るから、その倍の半年はかかるだろうとみんなが思っていたらしい。




「すごいですね。こんなに早く完成できるんですね」


 私が素直な感想を述べると、みんなが「じとー」と見てくる。なんで?


「まあーなんだ、カナデのでたらめな力のことは今は考えないようにしようじゃないか」


 カルコス親方が、何かあきらめたような顔でみんなを諭している。




「でも、本当に完成しちゃったんですね。こんなに早く……ハハハ」


 サクラさんまで乾いた笑いを吐き出している。


「まあーなんだ、完成と言っても、車体の外側だけだがな。内装はまだだぞ」


 カルコス親方がそう言うと、みんなが現実に戻ってきたようで、一斉に語り出した。




「そうよ、内装はパルトの所で制作しているんだけど、すごいわよ。新技術がてんこ盛りよ。技術者の人たちが大喜びよ」


と、ツバキさんが言うと、


「そりゃそうよー。希少素材が山のようにあるんですものー。きっと、ギルド機密になるような新技術よー」


 シンティさんも抑揚のない声で続いた。


「ええ、私の兄たちが、これでもかってぐらい希少素材を送ってきましたからね」


 サクラさんも、棒読みだ。


「そうよね。あの人達、サクラのことになるとものすごく過保護になるから……」


 つくも(猫)の頭から尻尾までを丁寧になでながら、ツバキさんがまとめた。




 ツバキ姉様にそこまで言われるサクラさんの兄様達はどんな人たちなのだろう。すごく気になるぞ。でも、ツバキさんのイライラはすっかり沈静化したようだ。つくも(猫)の功績だ。




「とにかくだ、内装の完成までまだ時間があるから、サクラたちは、この車両の試運転をして置いてくれ」


 カルコス親方がそう言うと、


「そうね。世界初の双子の樹魔の変形も試運転よ。ただし、まだ秘密なので試す場所は考えてよ。それに、試すときには私も行くからね。置いていかないでよ……。わかった、サクラ」


 サクラさんが一瞬「エッ」という顔をしたのをツバキさんは見逃さなかった。




 新しい樹魔車両の試運転は、早めになれさせて置いた方が良いからと、3体の新人賢魔鳥達と行うことになった。


 内装は、一応乗れるように簡単な物が取り付けられている。異次元収納箱がある世界なので、いろいろな小物は箱を数個を乗せておけば事足りるらしい。


 樹魔車両は、通常形態、高速形態、宿泊形態、歩行形態、戦闘形態の5つに変形できる。


 サクラさんの樹魔特別車両は、その倍の変形ができるので、その動作確認もすることになる。


 また、双子の樹魔車軸が想定通りに機能するかも確かめる。やることが結構ある。


 内装も、異次元収納箱の技術を応用した画期的なものになるらしい。シンティさんとなら見学ができるらしいので連れて行ってもらえることになっている。とても楽しみだ。



明日は17話18話を3回に分けて投稿する予定です。

19話からは、1日2回投稿に戻ります。

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