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セイテイノア  作者: みか
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12/32

セイテイノア12

「アアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァ!!」

新たに現れた化け物はその黒い終始をまき散らしながら大きな両翼を羽ばたかせ、その風圧でやっと屋上にたどり着いた蜘蛛の群れの先陣が外に弾き飛ばされる。

俺はあまりの奇声と風圧にその場にうずくまることしかできなかった。

ただ立ち尽くす真木さんをどうにか屋内に引き戻そうとするが、俺の声も届かない。

なんとか彼女に触れられる距離まで行き、あの化け物が蜘蛛の群れに気を取られているうちに彼女の手を引こうとするがびくともしない。

「真木さん!!早く!!」

流石にこの距離では俺の声は聞こえているはずなのだが。

なぜ動かない?

先ほどの戦闘のダメージが思いのほか大きかったのか?それなら俺が運んで・・と考えていると急に彼女は俺の手を掴みあの化け物に向かって走り出した。

「ま、真木さん!?どうして!?」

俺は弱っているはずの彼女の力にすら抗うこともできずにほぼほぼ強引に引きずられる形でついていく。

周囲からは壁をよじ登ってくる蜘蛛の足音、正面には顔のない化け物。

前門の虎、後門の狼とはまさにこのことだ。

そいつは目の前で止まった俺と彼女をじっと見据える。

キョロキョロと首を動かし、まるで俺らを見定めているようだった。

俺から彼女へと顔があるはずの場所が動き、数秒間見つめ続けたかと思うと、急にその巨体を動かし俺と彼女をその鳥のように鋭い足の指で捕え、大きく羽ばたく。

見る見る屋上が遠ざかっていき、寸での差でようやく屋上に辿り着いた蜘蛛の群れが悔しそうにキーキーと鳴いていた。

どうやら俺達はとりあえず目の前の危機から脱したようだった。



真下に運転が停止している芸備線が見える。

そういえばあの電車でのテロも今日起こったことだったな。

今日は色々と起こりすぎて完全に感覚がおかしくなっていた。

こいつの目的もわからないし。

俺は俺らを運んでどこかに向かって飛んでいる顔のない化け物を見る。

よく見ると触手もないし、あの服も着ていない。

言葉もしゃべれないようだし、全身が黒い包帯で包まれているようで、あの魔将とは違う、のか?

正直顔のない化け物を見るだけであいつを思い出してしまい、軽くPTSDになっているようで、今こいつに命の手綱を握られているという状況が恐ろしくて仕方がない。

真木さんの反応を見る限り恐らく味方なんだろうが、トラウマになっているのだから仕方がない。

助けてもらったところ申し訳ないがどうか許してほしい。

・・・それにしてもこれ何処に向かっているんだ。

かなり長いこと飛んでもう市外まで出てしまっているが未だに降りる気配がない。

それとなく真木さんに聞いてみるが彼女もわからないようだった。

「で、この化け物はなんなんですか?」

「さあ、よくわからない。」

・・・ん?

「はぁ!?え、じゃあ俺たちはよくわからない化け物に今命を預けているんですか?」

「そういうことになるね。」

そう言う彼女の表情は決して涼しげではなかった。

おいおい、勘弁してくれよ。

まだ危機は去っていないのか?

嫌な冷汗が額を流れる。

俺は最悪飛び降りても不死身だからいけるか?

今度も生き返れる保証はないし、もし降りられたとしてもどうやって帰るのかが問題だが、このまま死を待つよりは分の良い賭けな気がする。

いや、気を失って回復する間にまた連れ去られるのが落ちか?

そこそこ長い間意識を失うみたいだし。

それに一人で逃げたとして彼女はどうなる。

そのまま捕まったままか、それとも俺と一緒に落下か。

流石にこの高さではのあでない限りどうにも・・・。

起きたら目の前に真木さんの死体があるという最悪なことを想像してしまい身震いする。

結局このままどこに行くかもわからないまま揺られ続けるしかないという結論に落ち着き、俺は黙って眼下の景色を眺めながら考える。

もしかすると俺らは地獄行きの片道切符に乗ってしまったのかもしれない、と。



しばらく飛び続けた後、郊外のだだっ広い境内の中心に俺らは降ろされた。

俺らを運んできた化け物は俺らを下ろす前からボロボロと崩れかかってはいたが、地上まであと数メートルのところで完全に崩壊してしまい、俺と真木さんは地面に雑に捨てられる感じとなった。

もう少し丁寧に扱えという文句が出かけたがなんとかこらえ、良く知らない土地に取り残される形となった俺たち二人は、まず現在地を特定しようとそれぞれに俺は周囲を見渡し、真木さんはすぐに携帯を手に取る。

周りは森で囲まれ、どことなく俺の住む地域にある神社跡に似ているな。

こっちはちゃんと現役の神社っぽいが、特になにがあるわけでもなさそうで、なぜここに?と改めて思っていると本殿の方から聞いたことのある声がした。

つかみどころのない、ふざけた声が。

「やあ、こんなところで会うなんて奇遇だね。」

「・・・っ。」

俺は「あんたが連れてきたんだろ。」と怒りのままに言おうとして息を飲む。

なぜならその人物は俺の知るあの不吉な男ではなかったからだ。

完全にそうだと思ったんだが・・・。

見た目は少年っぽく、恐らく初めて見る人だ。

だが、「・・・ん?どうしたんだい?」とこちらを不思議そうに見る彼の姿を見て俺は確信する。

こいつは、あの不吉な男で間違いないと。

声も姿も全く違うというのに、何故かわかる。

そもそもあの男はあのときのあに切られ砂になったはずだが、やはり生きていたということだろう。

姿を変え、少年になった男がそこにいる。

「わかるだろ?僕が誰か。」

「ああ、わかるよ・・・。いやというほど。」

理屈はわからないが、確かにあの男はそこにいる。

相変わらず賽銭箱の上に片膝を立てて座り罰当たりなやつだ。

「そう言えばまだ自己紹介がまだだったね。僕の名前は神田(ジンダ)という。神様の神に田んぼの田だ。よく神田(カンダ)と間違われる。」

こいつ名前に神入ってんのかよ。

微妙な共通点に顔を顰める。

名字に神があるから賽銭箱に乗ってもセーフとか言い出さないよな?

「名前で言うと君の方が神っぽいから君がここに座るかい?」

誰が座るか。

自分の座っている賽銭箱をトントンと叩く彼を無視し、俺は彼に話しかける男性に目を向ける。

「あんまり俺を酷使しないでくださいよ。こいつだってあんまり出したくないんですから。全然言うこと聞いてくれないし。」

「まあまあ、今回はちゃんと言うこと聞いたじゃないか。ほめてやりなよ。」

「まあ、人間嫌いのこいつにしてはよく殺さずに連れてきてくれたと思いますけど。」

そう言ってその男は黒い粒子の出ている自分の手のひらを見る。

そのセリフからもどうやらこの男があの化け物を出していたみたいなのだが、そいつの顔を見て俺はあれ?と自分の記憶を探ることを迫られる。

こいつどこかで見たことあるような・・。

その男を見て俺は確かに記憶の蓋が刺激されたのだが、完全に思い出すことはできず、悶々とした嫌な感覚だけが残った。

「はっはっはっ!!まあ、元が元だからね。」

「どういうことですか?それ。」

「変えたいなら君が変わらないとってことだよ。」

「・・・それは無理でしょうね。」

「うん。つまり、そういうこと。」

その言葉に男は「はぁ」とため息をつき、興味をなくしたようにスマホを取り出しいじりだす。

「お前らは何のために俺らをここに連れてきたんだ・・。」

「何のためって、決まってるでしょ。」

賽銭箱に座ったままの男はにやりと笑い、次の言葉を放つ。

「君と話すためさ。」

「・・・は?」

何を言っているんだこいつは。

そんなことのためにあんなことをしでかしたというのか?

「こんなことでもしないと君と接触できないんだよ。」

彼女がいるからねと男は忌々しそうに口にする。

「君は彼女が何をしようとしているのか知っているのかい?」

「何って、世界の秩序を守っているんだろ。お前らみたいな犯罪者や化け物から。」

「おいおいひどい言われようだなあ・・・。いったい何を吹き込まれたのか。」

彼はやれやれと気だるそうに首を傾けて言う。

「彼女はさ、この世界を破滅に導いているんだよ。」

・・・どういうことだ?

あそこまで自分を犠牲にして異形共と戦っている人が破滅に導いていると、そういったのか?こいつは。

「破滅願望があるのか知らないけど、どうやら彼女はこの世界と心中する気らしい。」

心中・・?

「破滅に導いているあんたらが言うと説得力があるね。」

ここで黙って聞いていた真木さんがさすがに我慢しきれなくなったのか横から皮肉たっぷりの激しい罵声を浴びせた。

「今回の事件で損害はいいとしてどれだけ被害者が出たか。芸備線のも含めると4桁はいくよ。それにこれだけ被害が出るともう世間に隠し通すこともできない。世の中は大混乱だ。あんたらは何がしたくてこんなことをしてるんだ?」

一見落ち着いているように見えるその言葉一つ一つから沸々と苛立ちが感じられ、彼女は鋭い眼光を正面の男に向ける。

「理由は言っているだろう。彼と話すためだと。」

「彼と話すためにはこの世界はなくなってもいいと。ひどく迷惑な客だね。」

「それは彼女に聞いてくれよ。そうしているのは彼女なんだから。」

「ノーフェイスに伝えると良い、この世界は無理ですって。のあさんがいる限りこれ以上の侵略はできないよ。」

「それはどうかな?世の中は広いもんで上には上がいるもんだ。上限なんてそこには存在しない。」

ましてや、悪魔でもないただの作り物が限界だなんて笑わせる。

・・・?

俺がその言葉の意味を理解できずにいると、そう煽って笑う彼に限界が来たのか、真木さんが右手を広げて何かをしようとする。

しかし失敗したのか、彼女は?と眉を寄せると何かに気づいたように神田を睨んだ。

「無駄だよ、君の力はここでは使えない。」

彼のその言葉を聞いて彼女はすぐにその開いた右手を握りしめ、大胆にも正面から男に距離を詰めて行った。

その動きは予備動作がなかったにしてはすさまじいスピードで一瞬彼女を見失ってしまったほどだった。

しかし今にも拳が命中しようとした瞬間、彼女は目の前で地面に引き倒された。

突然どこからともなく現れた先ほどの両翼の黒い化け物が彼女に覆い被さり、押さえつけたのだ。

彼女は必死に食い込む爪から逃れようと身体を捻るが、抵抗すればするほど拘束する力は強まりぎりぎりと鈍い音が辺りに響く。

「ぐっ。あ、あいつ・・・。」

「アア、あ・・。」

まったく身動きの取れなくなっている彼女をその化け物は口もないのに言葉のようなものを発しながら押さえつけ、首を動かし彼女の様子を伺う。

その様子はいたぶって反応を見ているように見え、まるで鳥が虫を捕食しているかのようだった。

「いいかい?君はこの世界においてどうでもいいんだ。後から入って来ただけでイレギュラーになれると思ったかい?残念、実力がないと意味がない。のあや、そこの彼のようにね。以前のように自分の世界に引きこもっていると良い。あ、もうないんだっけ?」

なぜそこで俺の名前が出てくるのか疑問だったが、なに?

まったくこいつの話が理解できない。

真木さんの過去のことでなにか煽っているのだろうということは理解できるのだが、肝心の中身が。

後から入ってきた?もうない?

どういうことだろう。

まったく身動きの取れなくなっている真木さんに対し、精いっぱい煽った後で彼は「グッドタイミング。助かったよ。」と俺の背後でスマホをいじっている男性に声をかける。

「別に俺の助けは要らなかったでしょうに。」

「いや、助かったよ。僕も本調子じゃないからね。少しこちらの用事を優先してもいいかな?」

「・・・別に俺はこいつが殺せれば何でも。」

なんだ?こいつらの同盟の話か?

本調子じゃないとも言っていたが。

俺より圧倒的に強い真木さんが手も足も出ない相手・・・。

俺はこれから一体どうなってしまうんだ?とこれから行われることに冷汗をかく俺に男がやっと落ち着けると言わんばかりにすかさず声をかけてきた。

「そういえば自己紹介をしていなかったね。僕の名前は神田、まあ、見ての通り仕事はしていない。しいて言うならばのあを殺すことが仕事、というか使命かな。」

人を殺すことが使命だと、自然な流れでそう言い切ってしまい、一瞬聞き流しそうになった。

「のあを殺すことが使命・・?」

「そう。まあ、ある目的のためにこなさなければならないミッションというか。ほらゲームとかでもあるでしょ。キークエストみたいな。」

「ある目的ってなんだよ。」

でもこれが難しくてねー無理ゲーなんだよこれがまるで下位装備で・・・とゲームの話を広げようとしてくるそいつの話をバッサリと切り捨てて尋ねる。

彼は一瞬話を遮られて不服そうな顔をしたが、よくぞ聞いてくれたと嬉しそうに指を鳴らして告げる。

「・・・ある魔将の復活さ。」



「そもそも魔将が何かもわかってないでしょ?

 魔将って言うのは、まあ言わば神ってこと。

 君が神を信じるか信じないかはとりあえず置いといて、魔将は一つの世界をも作り出す力を持っていて、その世界の中では何でもすることができる。

 文字通りなんでもだ。

 人知を超えた奇跡も当然起こせる。

 力を持たない者がそれを見ると錯覚するんだろうね神か何かだと。

 でもそれはあながち間違いじゃない。

 本来、神とは人知を超えた奇跡を起こせる者を人間が勝手にそう呼んでいるだけだからね。

 それがちょっと残忍さを持っていたというだけのことだ。

 ちょっと生物をいたぶるのが好きで、自分勝手だったというだけのこと。

 こっちが勝手に期待しすぎていただけだ。

 神のことなんて想像でしか知らなかったというのに。

 ああ、ごめん。ちょっと話がそれかけていたね。

 話を戻すと、その魔将っていうのは、本来どの世界にもいるはずなんだ。

 世界自体を作っているのが彼らだからね。

 そう。つまり、この世界にも。

 世界がどこまでを表しているかがわかんないって?

 まあそうか。普通の人は星のみとか、太陽系までとか、天の川銀河までとかさまざまだろうけど、世界は世界だ。独立した世界。銀河もすべて含めて。

 僕もすべての世界の果てまで見に行ったことはないけれど、おそらくこの認識で間違いないはずだ。

 そして通常それぞれの世界は交わることはない。

 他の世界を覗くこともできないし、存在を知るすべもない。

 イメージとしては世界線が違うみたいな感じだよ。

 ほらタイムスリップものとかでよくあるだろう。

 平行に並んだ世界が同時に存在していたのに気づかず、違う世界線に来ちゃったよ、みたいな。

 そんな感じ。

 じゃあなぜ僕がそれを知っていると思う?

 わからないって、初歩的なことだよワトソン君。

 知っている者に聞いたからだ。

 そして実際に確かめた。

 だからそれが真実だと確信できる。

 あぁ、そう。彼だよ。

 顔のないパーカーを着た魔将。

 ノーフェイスって呼んでたんだけどそこにいる彼の出す化け物も顔がなくてちょっとこれだとキャラ被っちゃうなーっていうのが最近の悩みかな。

 一番最初に真実に気づいたやつはなんなんだって?

 さあ。それは僕にもわからない。

 どうやってそれを知ったのか。皆目見当もつかないね。

 普通は自分のたちの住む世界の外側にまで気を向ける好奇心と余裕がないからね。

 とにかく自分たちの住む世界以外にたくさんの世界があるということは事実だった。

 そしてそれを知った力を持った魔将、所謂神たちは外の世界に行く方法を簡単に見つけた。

 見つけてしまった。

 想像力の乏しかった魔将達は1を与えられたことにより、それを100まで発展させた。

 神々の世界大戦の始まりだ。

 彼らは他の世界を侵略し始めた。

 それによりまた他の世界の存在が知れ渡る。

 負のループ、負の連鎖。

 元々自分の世界でなんでもできた魔将達は暇で刺激に飢えていたのだろう。

 瞬く間にそれは広まっていく。

 奇襲を食らった世界はそのまま飲み込まれたり、なんとか抵抗して耐えたり、返り討ちにしたりと様々だが、大混乱で状態は最悪だ。

 力のない魔将のおさめる世界は瞬く間に滅ぼされる。

 魔将のいないこの世界がここまで無傷だったのがおかしいくらいだ。

 それでもやっと最近になって存在がばれたのかじわじわとここにも魔の手が迫りつつある。

 魔将がいない世界はただただ他の世界の主に蹂躙されるのを指をくわえてみているしかない。

 それほど、魔将の力は強大で、圧倒的なんだ。

 ん?彼女がいるだろうって?

 あー、そうだね。

 彼女は何かおかしいんだ。

 普通じゃない。

 魔将のノーフェイスとも互角以上に渡り合えることができる。少なくともこの世界内ではだけど。

 だから彼女は誤解してるんだ。

 自分の力を過信してうぬぼれている。

 まるで自分が魔将、神だと勘違いしている。

 この世界は自分ひとりで大丈夫だと。

 魔将などという不確かなものを復活させる必要はないと。

 おそらくこの世界の魔将を復活させたとしてそいつがどのような人物なのかわからないから不安なのだろう。

 他の世界の魔将に簡単に降伏して従属するかもしれない。

 そうなる場合を危惧しているのだろうが、どちらにせよ今のままでは時間の問題だ。

 じきにレベルの違う魔将共が押し寄せてくる。

 ノーフェイスなんか屁でもない力のある魔将が。

 そうだよ。ノーフェイスはどちらかというと力のない魔将だ。

 言語を習得したりと知能はやたら高いが、力は他の魔将と比べると劣る。

 だから僕はやつと手を組んだ。

 のあに対抗するために。

 やつはどうしてもこの世界を真っ先に手に入れたいようだったし、この世界の魔将の復活をやつも望んでいるようだった。

 理由はわからないが、とりあえずそうなんだ。

 とりあえずのあをどうにかしないことにはこの世界のどこかにいるかもしれない魔将の復活なんて夢のまた夢だと思ったから僕も対抗する力を手に入れた。

 魔将はすでにこの世界から去っている可能性もあったが、僕はまだいることに懸けて探し続けた。

 そして僕はつい先日やっとそれを見つけた。

 魔将の忘れ形見。

 それはなんの形になっているかわからなかったから探すのにとても苦労した。

 無機物になっているかもしれないし、動物になっているかもしれない。

 もしかしたらこの世界全体と同化してしまっていたかもしれなかった。

 でもそれは、人間の姿をして人間社会に溶け込んでいた。

 のあ?

 ああ、確かにそれは僕も最初に考えたよ。

 でもどれだけ観察しても人知を超えた奇跡を起こすことはなかった。

 どこまでいっても人間の身体能力を極限まで強化したというだけで神秘的なことはなにもできなかった。

 そもそも、彼女が魔将だったらとっくにこの世界の壁は固められ、こんなに無防備をさらしていない。

 魔将の忘れ形見、それは僕か?

 いや違う。

 じゃあ、のあか?

 これも違う。

 そこに這いつくばっている彼女でももちろんない。

 じゃあ誰か。

 ・・・そう。

 君だ。」



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