↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
境界の乙女  作者: みぎみみ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
67/80

第67話 荒野への到着

 荒野に近づくにつれ、空気そのものが、明らかに変質しているのが感じられた。


 結月は、馬上で意識を研ぎ澄ませた。以前訪れたときよりも、境界の揺らぎが、遥かに強く、そして不安定になっている。地面の亀裂からは、これまで以上に強い光が漏れ出し、時折、低い地鳴りのような音が響いていた。


「もう、始まっているのか……?」


 レインが緊張した声で呟いた。ノアが、耳を伏せながら答える。


「完全な突破には、至っていない。だが、時間の問題だろう」


 一行は荒野の外縁に陣を敷き、状況を確認した。遠く、遺跡の尖塔が見える方角に、赤黒い光が、不気味に立ち上っているのが見て取れる。


「あそこが、儀式の中心地か」


 ゼルギウスが、望遠鏡代わりの魔道具で、遠方を確認しながら言った。


「警備の数は、かなり多い。教会の残存戦力と、境獣に似た人工の兵――おそらく、例の量産型だろう」


「正面から突っ込むのは、得策じゃないな」


 レインが唸るように言った。結月は、地図を広げ、遺跡までの地形を確かめた。


「ゼルギウスさん、以前、荒野を抜けたときに、迂回できる道があったと思います」


「ああ、東側の岩場を回れば、正面の警戒網を、ある程度は避けられる」


 ゼルギウスの提案に、結月は頷いた。


「わたしたちの先行部隊が、東側から遺跡内部への突入を試みます。本隊は、正面から、教会の残存戦力を引きつけてください」


「危険な役割分担だ」


「わかっています。でも、儀式を止めるには、直接、カイエンの元まで辿り着く必要があります」


 結月の言葉に、集まった有志たちの間に、緊張が走った。だが、誰一人として、退くという声は上がらなかった。


「行こう」


 レインの一声で、一行は動き出した。荒野に響く地鳴りの音が、次第に強さを増していく。結月は、馬を進めながら、遺跡の方角から漂う、これまで感じたことのない禍々しい気配に、身を引き締めた。


 最初の交戦は、荒野の中腹で始まった。教会の残存戦力――白い甲冑の兵士と、赤黒い光を纏う人工の兵が、一行の前に立ちはだかった。


「来るぞ!」


 ゼルギウスの号令と共に、両陣営が激突した。剣戟の音と、境界魔法の閃光が、荒野のあちこちで交錯する。


「結月、俺たちは先へ進むぞ!」


 レインの声に、結月は頷いた。ノアと共に、混戦の隙間を縫うようにして、遺跡へと続く道を進んでいく。


「これだけの規模の戦い、あの子たちの姿が重なりますね」


 結月は、戦う人々の姿を横目に、静かに呟いた。ガレスで助けた子供たち、カルダンで感謝を告げてくれた女性、そして、この戦いに集まってくれた見知らぬ人々。それぞれの想いが、今、この荒野で交差している。


「あの子たちのためにも、ここで止める」


 結月の決意に、ノアが力強く頷いた。遺跡の尖塔から立ち上る赤黒い光は、刻一刻と、その勢いを増していた。決戦の刻限が、目前に迫っていた。


 レインが、結月の隣で、剣を強く握り直した。


「行くぞ。ここまで来て、退くわけにはいかない」


「はい」


 結月は、震える体を叱咤しながら、遺跡へと続く最後の道を、しっかりとした足取りで進み始めた。


第67話 了


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。