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DARKSPHERE〜戦士たちの鎮魂歌〜  作者: 高見 燈
第5章 アルティミシア大戦の始まり
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第22話 深海の皇王

 紛争中のナディア魔道学士館で、私達はドワーフの王であるカプノスさんにも再会した。

 そして、彼は言う。

 「この紛争を止める為に塔を破壊するのはオススメしない。」

 ん?と、直ぐに愁弥(しゅうや)が目を細めて言った。

 「なんでだ?」

 「この地は“知識の宝庫”だからじゃよ。新世界を創り上げ“月雲(つくも)の都”に新しい魔道学士館を創立させると言ったな?それならば、この地は遺し第2の魔道学士館創立を目指すのが正しい道じゃろうて。何も知識の宝庫を自ら灰にしてしまう必要性は無い。」

 カプノスさんはとても真剣な顔で言った。んん?と、愁弥がちょっと眉間にシワ寄せて言った。

 「つまり?俺らの拠点になる月雲の都に魔道学士館の支店を作れと??」

 「シテン??とは何じゃ??」

 カプノスさんが逆に眉間にシワを寄せて言った。あー、悪い。と、愁弥は直ぐに答えて言った。

 「や?だからその第2の魔道学士館だな。」

ん?だからそう言うたじゃろ?と、カプノスさんはとても怪訝そうな顔をしていた。

 偶に……愁弥の使う言葉の意味が解らない事がある。彼はとても気にして私達に合わせて話をしてくれるけど、愁弥の世界の言語なのだろう。それを使われると戸惑う事がある。カプノスさんは正にそんな感じだった。

 これも“異世界からの来訪者”だからこそで、、、愁弥もきっと戸惑い堅苦しく思う事が多いだろう。

 「それにお主らには言っておきたい事がある、彼等は知ってるかどうかは解らぬが。」

 カプノスさんはそう言うとグンジ達に目線を移した。え?と、グンジ達は揃って目を見開いていた。

 カプノスさんはそんな彼等を前にして言った。

 「お主らはこの“ナディア魔道学士館の動力”を知っておるかね?」

 「動力……ですか?」

答えたのはグンジだった。

 ほぉ?と、カプノスさんはその反応に目を細めた。

 「知らぬのか…………。」

カプノスさんはそう言うと深く溜息を吐いた。

 「それは………何なのですか?」

意外にもそう声を発したのは“紺碧の風”のリーダーであるレストだった。彼はとても真剣な顔でドワーフカプノスさんを見ていた。そんな彼をカプノスさんは見据えて言った。

 「“生贄”じゃよ。」

え??と、、、レストだけではなくグンジ達も驚いた様な声を発した。

 その時だった、、、。

ドォォォオン!!!!

 物凄い地響きの音と共に地が揺れたのは。

 「な!?何っ!?」

私はグラグラと揺れる地面、そして崩れ掛けてる塔が大きく縦揺れしているのを感じて叫んでいた。

 カプノスさんは、くっ!と、顔を歪めながら揺れる地面に片膝付き左手をも着けて自身の身体を支えながら言った。

 「来おったか……っ!速いな……さすがに………っ。」

 「カプノス!どう言うことだ!?」

そう怒鳴ったのは揺れる地面で踏ん張るルシエルだった。カプノスさんはそんなルシエルを見て言った。

 「次期に解る………。」

彼は言うと眼を閉じた………。

 それは何か何処か……覚悟している様な渋い表情だった。

 「く……崩れますっ!!」

グンジが既に脆くなり所々、穴すら空いてる天井を見上げながら声を荒げていた。

 「!!」

私はその声に、ハッとして天井を見上げたが大きな縦揺れの中で、ボロッと天井の石版は崩れ大きな落石となっていた。

 「きゃあっ!」

 「ミントっ!」

まるで石の塊がミントの頭上に降ろうとしていた。彼女の悲鳴にカリンの声が聞こえた。

 「ミント!」

私が駆け出そうとした時だったーー。

それよりも速く、、、愁弥が神剣を携え跳び上がっていた。大きな落石を彼は神剣を振るい木っ端微塵に粉砕したのだ。

 「…………!」

私はその迅速さに驚いた。けど、彼は軽やかに、だんっ。と地に着地するとカリンに手を差し伸べ、ミントにも神剣を持ちながらも手を広げていた。

 「怪我してねー?」

その1言に、、、カリン、ミントは駆け寄っていた。

 「「愁弥っ!!」」

2人は生命を救われたと瞬時に理解したのか直ぐに駆け寄り、手を広げている彼に飛び付き抱き着いていた。

 「……………。」

 ほっ。とした。私は。同時に愁弥の危険回避能力には脱帽していた。それが他者に向けられる事にも。

 だが、地揺れは終わった訳でなく、更に地面が閃光を放ち始めた。

 それは目映い光であり私達の立ってる石床の地面を槍の様に所々から地底から貫く様に突き破り放つ。

 「うわぁっ…………!」

グンジ達を始め……このフロアに居る者達の目映さに眩む様な声が発せられる。確言う私も……その眩しさに眼を細める程だった。

 閃光は徐々に地面を覆う程であり、そして突き抜けた。

  キェェェェェ!!  

奇っ怪な声を上げながら地底から地面を突き破り破壊し……私達の前にその者は現れたのだった。

 ズガァァァン!!

それは途轍もない衝撃であり、、、その者が地面を突き破り現れた事で更に地は揺れた。更に私達の目の前の地面は空洞が出来ていた。

 バサッ……バサッ……

大きな両翼を広げながら羽撃く、、、水飛沫を上げながら。

 目の前に現れたのはアクアブルーの白鷺に似た姿をした大きな者だった。だが色合いは蒼み掛かった碧だがその身体は半透明であり胎内が視える。その者の胎内には黒い斑点の様な球体が幾つも散らばっていた。更に胎内はアクアブルーの液体が流水の如く流れていてその中に黒い斑点の様に球体達は流動していた。まるで水の中でぷかぷかと浮く泡の様に。

 「何なのっ!?」

私は地揺れの中、、、何とか体制を保ちつつ双剣を握り締めた。

 すると、、、むぅ。と、、気難しい顔をしたカプノスさんが立ち上がりながら言った。

 「コレじゃよ。“ナディア魔道学士館の動力”……、コイツは“深海の皇王(デューサ)”幻獣じゃ。しかも“深海の精霊(シードラゴン)”を率いておってな、厄介な奴じゃて。」

 「は?幻獣??」

愁弥が驚いた様な声を出していた。

 うむ。と、カプノスさんは頷いた。

 「この地は元より“聖域”と言われていて精霊、幻獣、エルフが棲む地なのじゃよ。そこに人間……“魔道士カルラ”は目を付けた。この地が“魔道”に最適だとな。故に彼女は彼等と“契約”した、この地に魔道学士館を創立するのと引換えに“生贄”を差し出すと。」

 「え?」

私が聞き返すとカプノスさんは、“デューサ”の胎内でまるで藻の様に浮かぶ黒い球体を見据えていた。

 「アレはカルラに破門された魔道士達の魂。つまり、、、生贄を差し出す事でこの地は活動を赦されている。魔道学士館が絶海の孤島で動力に困らず更に鉄壁と称し、是迄どんな戦にも巻き込まれず略奪を拒めた理由は、この者達の守護があったからだ。」

 カプノスさんの言葉に私は目の前に浮かぶ白鷺に似た幻獣を見つめた。

 「……契約………。」

私がボヤく様に言うとカプノスさんは言った。

 「そうじゃ、ワシはこの魔道学士館の“全て”を探る様に頼まれている。故に潜入し調べた結果だ。恐ろしい事に……カルラは幻獣を捕えそれを“貢物”として小奴らに献上していた。ワシが見つけた“黒闇の伝道師(ダークカルマ)”も生贄だったのじゃよ。」

 は??と、私……いや、愁弥、ルシエルも同時だった。声を発していたのだ。けれども、直ぐにルシエルが、グルルル……と、頭を低くし唸り始めた。更に怒鳴ったのだ。

 「カプノス!カルラは何なんだ!?幻獣を幻獣に献上とか意味が解らんっ!確かにダークカルマは嫌な奴だ!引っ掻き回すのが生業だからな!伝道師だけに。けど、アイツだってそれなりに人間にも神族にも貢献して来たっ!それを利用して生贄だとっ!?ふざけるなよ!?」

 そう怒鳴り今にも噛み付きそうな顔のルシエルに愁弥が、彼の頭を撫でながらカプノスさんを見て言った。

 「それは俺も聞きてぇな、“破壊神(メシア)の遣い”ってのはなんだ?カルラはクリュトにそう言ってた。それって瑠火に関係してんだよな?」

 「…………っ!」

愁弥の言葉にカプノスさんは赤ら様だった。瞬時に顔色が変わったのだ。私はそれを見て言った。

 「カプノスさん!知ってるなら教えて欲しい!」

私も切実だったーー。

 「…………。」

カプノスさんは少しだけ俯いたけど、直ぐに私達に顔を向けて言った。

 「“12の護神”それと同様。お主を守護し制御する者達の事を言う。それは“守護の盾(ガーディアン)”とは異なる者達だ。ガーディアンとはお主の意志を尊重しお主の為に生きる者達。“破壊神(メシア)の遣い”とは、それとは異なりこの世界を守護する為にお主に力を貸す者達。つまり、お主が“闇堕ち”すれば迷うこと無き制裁をする者達。だが聖なる者ならば“生命賭けて守護する者達”。難しいかも知れぬが……“根っこ”が違う。お主単体を護る者達とお主を通し世界を護る者達。故に………。」

 カプノスさんは私達を見て言った。

 「それはお主にだけではなく、アルカディアにも“堕神アンフェル”にも居ると言うこと。」

 !!

私達は自然と顔を見合わせていた。

 「……………。」

愁弥もルシエルも何かとても強張った顔をしていたけど、愁弥が口を開く。

 「てことは?カルラは瑠火を裏切ったってことだよな?」

 「いや?違うな………、カルラは元より“月雲の民”を敵対視していた、だが魔道学士館創立にどうしても月雲の力は必要だった、“白雲(しらく)村長”は“破壊神(メシア)の遣い”だ、だからカルラは歩み寄り忠誠を誓いその力を授かった。が………“暴走”した。己の欲望が邪心が野望が膨大過ぎて制御出来なくなり、結果……自滅した。だから瑠火を裏切った訳ではない、自業自得の末路を辿ったのじゃよ。」

 カプノスさんは淡々と……そう言った。でも、ルシエルは吠える様に怒鳴った。

 「だとしても!ダークカルマの自由を奪い、俺様と愁弥を傷つけ、ブラッドのおっちゃんを死に追いやり、リデアを殺した!!そんな奴が瑠火を制御する側の人間だとっ!?ふざけるなっ!!やっぱ狂ってる!この世界の何もかもっ!!」

 グルルル……!

ルシエルは唸っていた。

 「ルシエル………ワシに怒りを向けてもどうにもならんよ。」

カプノスさんはとても悲しそうな眼でルシエルを見て言った。

 あ。と、、、ルシエルはふぅ、と、鼻息溢した。何か自身の感情をセーブしようとしていた。

 カプノスさんは、ふぅ。と、、、軽く息を吐き言った。

 「だからお主達は“創造”する道を選んだのじゃろ?だからワシはそれに賛同している、ルシエル。ワシは敵ではない、が、言うべき事は伝える。それは必要悪であると思う、お主らがこの先……生きる為に。」

 

 

 カプノスさんの言葉はとても重くて強くて……、地揺れすら感じなくなる程だった。      


  

             

 

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