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「愛することはない」と言った旦那様と離婚して、王都一の魔導衣装師になりました  作者: 星舟能空


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第39話 二級衣装師

 登録証は、合格掲示と同じ日に受け取れた。三級より厚い金属板へ、二級衣装師、ヴェレナ・ノルデンと刻まれている。窓口の職員が権限を読み上げ、婚礼誓文の縫製、公的診断、検分請求の三つを私が復唱して、初めて登録が成立した。


 私はその場で、六十九件の申告書と検分請求を提出した。自分の婚礼衣一着は既処理であることを一枚目に書き、二枚目には他家六十九着の日付と貸出先、三枚目には無資格で第十二条を足した事情、四枚目には全件の裾と欠陥型紙の検分を求める理由を記した。私的台帳の原本は封をし、複写には各頁の欠けまで写してある。


 申告書を四枚に分けたのは、どれか一つだけが読まれても意味を取り違えないためだった。一枚目には違反、二枚目には件数、三枚目には事情、四枚目には検分。事情だけなら花嫁を救った美談になり、違反だけなら六十九回の隠し縫いになり、検分だけなら私が正しい型紙を発見した功績になる。四枚を同じ受領番号で綴じるよう、窓口で確かめた。


 原本の封には、私、ケルナー、エルナの三つの印を置いた。私が後から行を足さず、庁が頁を抜かず、検分協力者の記録と混ぜないためである。六十九行のうち現物を確認できた八件には印を付けたが、残りを「未確認」とし、「不存在」とは書かなかった。


 窓口の後ろで、職員二人が上司を呼ぶべきか相談していた。私は次官室へ直接出すよう勧められても、一般の届出と同じ受付印を求める。特別な扉で受け取られれば、後に特別な裁量で返される可能性もある。申告は、受理を願って窓口の慈悲を待つものではない。書式を満たして提出した時点で、誰にも抜けない記録の縫い目になる。


「登録手続きの直後で、よろしいのですか」と窓口の職員が確認した。


「直後だから出します。二級として依頼を一件受けてから停止されれば、その依頼人まで待たせます」


 受領印が四枚へ一つずつ押された。二級の登録番号と、無資格施術を申告する番号が、同じ日付で並ぶ。資格に、過去の手を清潔に洗い直す力はない。ただ、これまで閉じていた検分の入口を開く板にはなった。


 直し屋へ戻ると、ミナが登録証を両手で受け取った。表の名を読み、裏の権限を確かめ、祝い用に買ったらしい細い青布を出しかけて、元の抽斗へ戻す。


「おめでとうって、言えません」


「言わなくてよいです」


「でも、合格したのは嬉しいです。嬉しいのに、これで失うんですよね」


 彼女の涙を、私は止めなかった。自分が選んだから悲しまないでほしいと言えば、私の決断に合わせて彼女の感情まで整えさせる。ミナは登録証を返さず、涙の落ちた箇所を袖で拭いてから、青布と一緒に卓へ置いた。


「先生が一件に直したら、怒ります」と彼女は言った。「でも、直さないで生涯になっても怒ります。どうすればいいか、分かりません」


「分からないままでいてください。私のために、どちらかを正しいことにしなくてよいです」


「先生も、全部正しい顔をしないでください」


 私は頷いた。六十九件を出すと決めたことで、過去の臆病さまで勇気へ塗り替えたくなる。けれど申告は、三年間黙った時間の続きであり、遅れて選べたにすぎない。その遅さに怒る人の言葉も、私の周りに残ってよかった。


 ミナは青布の端へ飾りを付けず、汗を吸う裏布だけを重ねた。二級の板を祝いの光へ見立てず、重い金属を一日首から下げても皮膚が擦れない道具にする。私たちは登録証を飾る代わりに、使う一日のための紐を作った。


 ゾンネたちは、推薦理由の控えと申告書の受領印を照合した。推薦した責任を、合格の瞬間だけで終えないためだ。エルナは六十九件と自分の工房の試着記録が別添になっていることを確かめ、「これなら署名を取り下げません」と言った。彼女から祝福はなく、その方が今日の仕事には正しかった。


 夕刻、ライナルト様が灰色外套で店へ来た。登録証を見せると、彼は表も裏も読み、私の右手に返してから言った。


「おめでとう。失うために取ったものでも、あなたが取った資格だ」


 ミナが顔を上げた。私も、返事をすぐには選べなかった。祝えば犠牲を美しくし、祝わなければ十日間の仕事まで消えると思っていたところへ、彼は二つを同じ言葉へ押し込まず置いた。


「ありがとうございます。失うまでは、二級として扱ってください」


「失ったあとも、今日受かった事実は変えない」


 彼の言葉を将来の慰めにはせず、私は登録証を首から下げた。まだ使える権限があるうちに、検分書式を整えなければならない。


 ライナルト様は祝いの品を持ってこなかった。その代わり、公爵邸の書庫から、六十九家の貸出先と王室婚姻台帳を照合する許可証を持っていた。使うかどうかは私が決め、王家の命令で衣装を提出させないこと、閲覧した家名は審理番号へ置き換えることが条件に書かれている。


「これは助けですか」と尋ねると、彼は少し考えた。


「王室が持つ記録を、申告者にも同じ条件で見せるという手続きだ。あなた一人のためなら、ほかの申告者にも開く規程を作る」


 私は許可証を受け取った。贈り物なら断っていただろう。次の人にも使える入口へ変えた上で差し出されたものなら、借りを作ることと同じではない。


 閲覧室では、六十九行の頭文字を家名へ戻し、婚礼日を一件ずつ確認した。誤差は二件あり、一件は日付が翌日にずれ、一件は貸出先の支家と本家を取り違えていた。私は申告の訂正票を同じ日のうちに出し、件数は六十九のまま、誤った二欄を線で消した。資格を得た日に書いた紙でも、誤りは誤りとして残せる。


 申告の三日後、誓約庁次官のライヒェルトから呼び出しが届いた。細身の男で、机の上には私の四枚と、六十九行の一覧が過不足なく揃えてある。彼はまず、自分の権限で申告を消せないこと、審理が始まれば資格停止となる可能性が高いことを説明した。


「六十九件をすべて申告すれば、慣行上は生涯剥奪です。一件だけなら、五年の停止で済む可能性があります」


「一件へ訂正する理由は、何でしょう」


「現物とあなたの施術を直接結びつけられる一件を残し、残り六十八件は型紙調査の参考資料にする。虚偽の訂正ではありません。立証できる範囲へ申告を狭めるだけです」


「一件とは、どの衣ですか」


 ライヒェルトが選んだのは、縫い終わりに私の旧家名の一文字を隠していた衣だった。婚家で自分の仕事を誰にも奪われないよう、布裏へ小さく入れた印が、皮肉にも今は最も強い物証になっている。残る六十八着には同じ印がなく、私的台帳と縫い癖を重ねて証明するしかない。


「この一着だけなら、型紙の欠けを知って緊急に補った一回として扱える。反復の故意も、顧客へ隠し続けた期間も争わずに済む」


「済むのは、誰でしょう」


 問いが責める響きになり、私は言い直した。「私の処分以外に、何が変わりますか」


「六十九家の婚姻を一度に疑わずに済む。庁は既存の相続を動かさず、組合も全工房の貸型紙を止めずに済む」


 彼は自分たちが守るものを隠さなかった。申告者を救いたい善意だけではなく、制度を揺らしたくない都合も、一件という案にはある。だからこそ、単純な罠として退けず、失うものを数えられた。


 机の向こうの男は、私を罠へ入れようとしている顔ではなかった。六十九家の婚姻が、無資格の女の夜仕事で閉じていたと公になれば、当事者が負う混乱も分かっている。申告者を生涯仕事から外してまで、型紙を調べるべきかという迷いもあった。


「一件にしても、第十二条を欠く型紙は調べられますか」


「その一件の原因としては調べます。ただ、同じ型紙を使った全家へ検分命令を出す根拠には弱い」


「では、六十九件のままにします」


「あなたが生涯資格を失えば、六十九着を縫い直す者が一人減る」


「私の診断書が受理されれば、ほかの二級が縫えます。一人で六十九着を直す前提そのものを変えます」


「あなたほど第十二条を縫った者はいない」


「それは技術ではなく、秘密にした回数です」


 自分にしかできないと言われる言葉は、職人にとって甘い。婚家で私が六十九着を抱えたのも、自分が最も早く正しく縫えると思ったからだった。今度は、診断の書式と失敗を渡し、別の手が理解して縫える形にしなければならない。


「二級を取った目的は、そのためです。私一人を残すために一件へはしません」


 ライヒェルトは反論を止め、私の返事そのものを議事メモへ記した。賛成したのではない。審理官が後で一件への訂正を勧めた理由と、私が拒んだ理由を同じ紙へ残した。


「今、答えなくてもよい。正式審理まで訂正できます」


 ライヒェルトは四枚を返さず、受理済みの箱へ入れた。止めたいなら入口で突き返せたはずなのに、彼は制度の中で私が撤回できる最後の日を教えた。その慎重さを、敵意とも親切とも決めず受け取った。


 店へ帰る途中、二級の板が胸元で何度も布へ当たった。八日後には停止されるかもしれない。それでも八日あれば、申告を二級衣装師のものとして残し、検分請求に番号を得られる。私は短い所有を惜しむ代わりに、明日から誰の仕事も新しく受けないことを店頭へ掲示した。


 既に預かっていた二件は、依頼人へ事情を説明し、ゾンネへ引き継ぐか返却するかを選んでもらった。一人は私の診断だけ使いたいと依頼を分け、一人は処分を受ける者へ衣を預けたくないと、その日のうちに箱を持ち帰った。どちらも当然の選択であり、後者を私への不信として帳面から消さなかった。


 八日という予定は、判決までの期間ではない。審理開始に伴って資格が止まるまでの見込みにすぎず、その後に戻る可能性も、生涯になる可能性もある。私は店の掲示へ「八日後に閉店」とは書かず、「新規の術式縫製は受けません。通常の繕いは続けます」とした。資格の行方で、店のすべてまで終わったことにしないためだった。


 ミナは閉店後、青布を細く裁って登録証の紐を作った。祝いの飾りにするつもりはなく、審理で板を落とさないための丈夫な紐だという。私は彼女の縫い目を直さず、その紐へ二級の板を通した。


 翌朝、庁から正式審理の通知が来た。訂正期限は五日後。紙の末尾には、申告を一件へ変更する欄が、最初から大きく空けてあった。


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