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003 初戦闘

 呼吸が難しくなる程に濃い何か。

 アレクの知識があっているのであれば……これが所謂、魔素というものなのだろう。ダンジョン内で魔物が大量に発生する理由、魔物の根源たる素材らしい。とはいえ、上のそれとはレベルが違うみたいだけど。


探知(ソナー)


 風魔法の一つ、周囲五十メートルまでの魔物の位置を探れる魔法だ。ただし、練度が低いせいで何となくの位置が分かる程度でしかない。ゲームのようにマップがあるという訳では無いから目の前に広がる洞窟内の、自身の横の土の壁の先に反応がある、みたいな事もあって心臓には宜しくないな。


 だが、精度は低くても少し先にいる魔物が分かるだけで十分だ。腰から剣を抜いて構える。正しいのかは分からないけどスキルのおかげか、体が勝手に整えてくれた。


暗視(ナイトアイ)


 スキル【暗視】、パッシブスキルという訳では無いから発動するために文句が必要になるが、松明のみの微かな光の中では有無で明確に有利不利に差が出てくるレベルだ。


 例えるならば就寝前の電気を消してすぐの視界から、寝られず暗闇の中で慣れた視界に変わった程度の話。いやいや、レベル1だけでこれならポイントを振るのも視野に入れて良い程だ。


 これのおかげで、五十メートル先の魔物が視界の中に入った。アレクの知識が正しいなら……オーガだろうか。二メートル近くはある体躯に筋骨隆々の体、鬼の面を貼り付けたような顔と角は転生していなければ、ネットに転がるコスプレの類だと思いたくなる程に非現実的だ。


 ただし、その手にあるのは一メートル程の棍棒だけ。武器という観点で言えば僕の方が有利ではあるが戦うかどうかは……なんて、分かっている事を思考に入れるのは面倒の一言に尽きる。


「ガァッ……!」

「ああ、悪ぃ悪ぃ。不意討ち、だったな」


 周囲は壁、通路内での敵は目の前のオーガ一体のみだ。仮に他に魔物がいるとしても、そいつがオーガよりも弱い確証は無いし、次に会った相手が一体だけという可能性も高くは無い。


 ましてや、レベル上げは今後も必要になってくる事だ。ここで倒せないのであれば……奈落から出るなんて不可能だろうし、出るための手段を探るにしても一番の拠り所は阿弥陀籤だからな。全部、引っ括めて戦わない選択肢を取れる訳が無い。


 とはいえ、本気で切り付けた結果は左腕に斬撃を与えた程度……いや、何も成果が無いよりは随分とマシなのか。ただ、与えるのであれば利き手の方を傷付けたかったというのが本音だ。


 敵だと認識したのか、こっちを睨み付ける目は昔話にある鬼と何ら変わりない。足が震えないのは高揚しているからなのだろう。いやはや、軟弱な体では無いようで有り難い限りだ。




『僕は……絶対に負けられないんだ……!』


 いいや、もっと勝ち目のない戦いをアレクはしてきたんだよな。そりゃあ、勝てる戦いで足が竦むなんて事は起こらない訳だ。だって、振るった一撃は確かに速く重いが容易に躱せる程度……後退した僕の速度には追い付けてはいない。


 運が良いのか、悪いのか……スキルレベルは上がらずとも補正の効果は強いみたいだ。こう動くべきだと体が教えてくれる。それに合わせて動いたら容易に腹へ一撃を加える事が出来た。


「なるほどなるほど、オーガは一撃が重い代わりに鈍重な特徴がある、と。これでCランクの魔物なら意外と何とかなりそうだな」


 まぁ、手にした得物の切れ味が想定よりも良いというのもあるかな。振るった斬撃で見えた臓物を押さえてくれるとは……その首を落としてくれと言っているようなものだ。


「悪いな。僕は死ねないんだ」

「ガ───ッ!」


 首を落とした一撃、両膝をついて一瞬だけプルプルと震えたかと思うと倒れ込む。即座に煙へと変わって一つの大きな石を落とした光景を見なければ、生き物を殺した自責の念に捕らわれていたかもしれない。


 オーガの魔石、結構な大きさだ。

 普通に売っても良い値段が着きそうな程だな。拳大の魔石なんて幾らでも用途がある。……はぁ、器用貧乏な体で転生出来て本当に良かったと思えるよ。封印されているとは言っても勇者の体は勇者らしい。


「回収」


 魔石が手元から消えた。空間魔法で作られた別空間の中に入れる事が出来た証明だろう。特に動きが遅くなったとかは無いが……まぁ、レベル1では容量なんて高が知れているか。


 オーガ程度なら、タイマンという条件付きで容易に倒せる事が分かった。ポイントに関しては変わらず速度と、スキルは空間魔法に対してでいいかな。こんな場所では火魔法なんて使えるものではないし。


 って、ちょっと待てよ……!




 ______________________

 〇名前:アレク【ササキ リョウタ】

 〇年齢:7

 〇職業:無職【封印:勇者LV1】

 〇レベル:1【2350/100】

 〇HP 200/200

 〇MP 200/200

 〇STR 105

 〇VIT 105

 〇DEX 5

 〇INT 5

 〇MEN 5

 〇SPD 110

 〇LUK 100

 〇固有スキル

【阿弥陀籤】【レベル一の呪】【ステータス詳細】

 〇スキル

【一覧を表示する】

 〇魔法

【一覧を表示する】

 〇STポイント:0

 〇SKポイント:0

 ______________________




 オーガ一体で経験値千五百……多いのか、少ないのか分かった話ではないな。だって、僕の場合は一から二へ上げるための経験値量で固定されているから少なく感じられるんだ。でも、レベルが上がれば本来は必要量も増えるだろう。


 それを考えた時に千五百というのは命をかけるに値しないような気もしてしまう。意外と異世界も世知辛いものなのかもしれないね。やっぱり、神様は恨むべき相手みたいだ。


 さてと、一先ず、経験値を二千だけ使った。

 使ったけど上限に変わりなし、そこはレベル1の呪いが効いているからなのだろう。ポイントはどちらも百ずつ手に入れたから速度と空間魔法に振っておいた。


 ______________________

 上位魔法【属性:空間LV1】【0/100】

 属性:空間を使用する際に以下の補正を受ける。

 ・魔法の消費MPを2%減少。

 ・INT、MENに2%の補正。

 ・ダメージを2%上昇。

 ・異次元空間の許容量、2トン。

 ______________________


 ふんふん、やっぱり、想定通りだった。

 火魔法と水魔法に関しても上げた結果は似た文言。悪くないと言うには出来過ぎた結果だよ。とはいえ、魔法に関しては簡単なものしかアレクも使えなかったから有用、とは言えないんだけどさ。


 ただ有無で天と地程の差がある。

 有るのであれば曲がりなりにも使えるという事だからな。有用かどうかは別にしても、使えるという選択肢が残っているだけで、今後の話は大きく変わってくる。


「とりあえず、籤を引くか」


 出てきて早々ではあるけど元の部屋へと戻った。

 初出陣の成果はオーガ一体のみ、凄いのか凄くないのかよく分からない話だ。ただ、今回の結果からして次に知りたいのは二十回分の権利を得た阿弥陀籤に関して、だからな。要は実験の続きだ。


 一先ず、戻ってすぐに八回を赤に、他四色を三回ずつ引いてみた。結果として分かった事は、予想通り、各色に合わせて手に入る効果に大きく違いがあるという事か。記憶が正しければ青色は治癒、黄色は安定、赤色は力、白色は浄化、黒色は神秘みたいな意味を持っていた……はずだ。


 そこら辺は熱心な仏教徒では無いから分からない分野だからなぁ。田舎の祖父母の家に仏壇があったのを見て以来、信心深い事をしたとすれば毎月のお参り程度だろう。それも寺ではなく神社だ。


 さて、どうでもいい事は置いておいて……赤の結果に関してだが、出てきたのはSKポイントが5手に入るものが四つとSTポイントが5手に入るものが三つ……まぁ、この二種類は明確な外れだろう。問題は最後に出た当たり枠だ。


 ______________________

 固有スキル【身体強化LV1】【0/100】

 身体の能力を向上させる。使用中、一秒間につきMPを10使用する。使用する際に以下の補正を受ける。

 ・発動中の消費MPを10%減少。

 ・STR、VIT、DEX、INT、MEN、SPD に10%の補正。

 ・ダメージを20%上昇。

 ______________________


 固有スキル、それも能力が強い事に加えてレベルもあるという優れものだ。少なくとも、スキルの限界を越えられる僕にとっては、だけどね。

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