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世界の声が鳴る前に、俺たちは十のダンジョンを攻略していた――崩壊した日本で家族を守る高校生たちの拠点防衛記  作者: 竜太郎


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赤い無線

【本文】

 結衣の発作が落ち着いた直後、赤い無線が救助要請を伝えた。

 市民体育館の公的避難所で、天井の一部が崩落した。負傷者十数人。体育館の地下にもダンジョン入口が現れ、影獣が建物の周囲を徘徊している。

 地域隔離網の空きは三人分しかない。全員を連れ帰ることはできなかった。

 安西は救助班を二つに分ける。一班は負傷者の搬出、もう一班は体育館内に安全区画を作る。地域網を唯一の避難先にせず、地上側の避難所を維持する計画だった。

 湊、岳、小春、安西、奈々、救助型ゴーレム二体が向かう。出発前に食料、水、医療品の持ち出し量を記録した。

 体育館までの道路は三か所で途切れている。第九迷宮の物流路で資材だけを先送りし、人間は住宅地を迂回した。

 無線の向こうでは、避難所職員が負傷者の名前と状態を読み上げ続けている。誰か一人でも通信から消えれば、救助順を組み直さなければならない。

 地域網に残る千鶴は、空き寝台三つを重症者用に確保した。

 救う人数を三人へ減らしたのではない。三人は地下へ、残る人は地上で生きられる場所を作る。

 その二つを同時に行うため、救助班は赤い無線を切らずに進んだ。

 出動しない班にも仕事があった。第一迷宮では受け入れ寝台の清掃、第九迷宮では搬送箱の準備、病院では負傷者の情報待ち。赤い無線を聞いた全員が現場へ向かえば、戻る場所が止まる。湊は各担当へ出発人数と帰還予定を伝え、予定を十五分過ぎたら次の手順へ移るよう頼んだ。待つ側も救助の一部だった。

 受け入れ班は患者の名前が届く前でも、胸部、頭部、骨折の三種類を想定して器具を分けた。


(次話へ)

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