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世界の声が鳴る前に、俺たちは十のダンジョンを攻略していた――崩壊した日本で家族を守る高校生たちの拠点防衛記  作者: 竜太郎


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食料庫の鍵

【本文】

 第四迷宮の食料庫から、缶詰が六個なくなった。

 大きな損失ではない。だが記録なしで物が消えたことが問題だった。

 取り出しには二人の承認が必要なはずだった。リブラの記録を調べると、避難者二名が同時に扉へ触れ、承認者として誤登録されている。

 世界公開後に追加した人員の権限設定が曖昧だった。

 犯人探しを始める前に、千鶴は食堂へ紛失を伝えた。子どものいる父親が名乗り出る。夜中に娘が空腹を訴え、相談先が分からず持ち出したという。

 缶詰は二個食べ、四個残っていた。

 湊は罰として配給を減らさなかった。無断持ち出しは止める必要があるが、空腹を言えない仕組みにも問題がある。

 夜間相談担当と緊急補助食の棚を作り、食料庫の承認者を再登録する。取り出し記録は、持ち出した人を責めるためではなく在庫を守るためだと説明した。

 父親は翌朝から食料庫の数量確認を手伝う。

 六個の缶詰は、盗難事件ではなく、配給制度に開いていた穴を見つけた記録になった。

 父親が夜間相談先を知らなかった理由も調べた。掲示は食堂にしかなく、子どもを寝かせたあと区画を離れられなかったという。新しい案内は各寝床と無線でも伝え、文字を読めない人には担当者が説明する。規則を書いたことで、全員へ届いたと思わない。届かなかった場所を見つけるまでが周知だった。

 父親は残した四缶を自分で返却し、娘と一緒に夜間補助食の場所を確認した。

 緊急棚の利用も記録するが、夜間は承認を待たず使え、翌朝に報告する規則とした。

 使った理由を尋ねるのは、配給を責めるためではなく次の準備量を知るためだった。

(次話へ)

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