腐らせない順番
【本文】
倉庫から届いた野菜は、種類ごとに傷み方が違った。
葉物は二日、熟した果物は三日、根菜は長く保つ。セレネの冷却室へ全て入れれば、低温に弱い野菜が傷む。
美和は「先に食べる順番」を献立へ組み込んだ。保存できる缶詰や乾麺は後へ回し、今しか使えない物から調理する。
避難者には、毎日同じ物が出ないよう工夫しているのではなく、腐らせないため献立が偏る日もあると説明した。
皮や芯も、食べられる部分と堆肥にする部分へ分ける。第九迷宮の物流区画へ生ごみを放置すれば、臭いと害虫が広がる。
文は地下畑の堆肥箱を作った。ただし病気の葉や侵食粒子が付いた物は混ぜない。小春が状態を確認し、別の封鎖箱へ入れる。
世界の声は廃棄量が減るたびポイントを与えようとした。千鶴は受け取りを保留する。
捨てないために危険な物まで食べる競争へ変えられたくなかった。
その日の夕食は、傷みの早い葉物を使った薄味の煮物だった。
食べ切った鍋の底まで、使用量として記録された。
堆肥箱は生活区画から離し、温度と臭いを毎日測った。地下では自然に土へ戻るとは限らない。発酵熱が上がりすぎれば火災や菌の増殖につながる。文は一度に入れる量を少なくし、地上の落ち葉と混ぜる。世界の声が効率を上げる機能を勧めても使わず、失敗しても止められる大きさから始めた。
腐敗や発酵をモモの浄化で消す案も退けた。毎日のごみ処理を一匹の消耗へ置き換えない。
堆肥箱のそばには手洗い場を作り、作業靴のまま調理区画へ戻らない線を引いた。
作業後の手袋も堆肥箱の外へ持ち出さない。
(次話へ)




