塩の残量
【本文】
米と野菜が増えても、塩と油は減り続けた。
一食に使う量は僅かでも、百五十人分を三回作れば大きい。味を薄くするだけでは、汗をかく作業員や患者に必要な塩分まで不足する。
美和は調理用、医療用、保存食用に在庫を分けた。全てを同じ袋から使えば、目の前の献立で使い切ってしまう。
世界の声は塩一袋をポイント交換へ表示する。価格は前日の二倍だった。
文が町外れの味噌蔵を思い出した。塩、味噌、醤油が保管されている可能性がある。ただし道路は浸食体で塞がれている。
朔は第九迷宮の物流印を遠隔で作ろうとしたが、現地の容器と所有者承認が必要だった。
救助と食料回収、どちらを優先するか。安西は人命救助班を減らさないと決めた。味噌蔵へは、調理担当とゴーレム中心の別班を作る。
岳が護衛を申し出るが、連日の出動で疲労が溜まっている。小春は休息を命じた。
食料を得るために、守る人間を壊してはならない。
出発は翌朝へ延期された。
味噌蔵へ向かう班には、食料庫の残日数を伸ばすという目標だけを背負わせなかった。危険なら何も持たず戻る。安西は出発、到着、撤退判断の時刻を決め、通信が切れた場合の帰路も二つ用意する。塩六袋があっても、四人の命と交換する量ではない。延期の決定も配給所へ掲示し、待つ側へ理由を伝えた。
岳は不満を口にしたが、盾の点検中に手が震えているのを認めた。休む間は入口の地図整理を担当する。
出発班は美和、文、安西の三人とゴーレム二体に決まり、帰還予定を昼までとした。
安西は撤退の合図も出発前に三人で確認した。
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