医療区画の規則
【本文】
患者が二十人を越え、第七迷宮に正式な医療規則が必要になった。
第一は、治療の順番をポイントや陣営で決めないこと。第二は、能力使用にも本人または家族の同意を取ること。第三は、治療記録を残すこと。
モモやネーヴェの力は奇跡に見える。だからこそ、説明せず触れれば恐怖になる。
由香は医療従事者の休憩時間も規則へ入れた。連続勤務で判断を誤れば、善意が患者を傷つける。小春は自分も対象だと認めさせられた。
環は薬の在庫表を入口へ掲示せず、患者別の必要量だけ共有する。全量を公開すれば奪い合いを招き、隠せば不信を生む。何日分あるかと、次の補充予定を伝える。
ネーヴェはモンスター患者にも同じ印を付けた。重症度、治療内容、隔離期間。人間と同じ部屋には入れないが、命の順番を陣営で下げない。
最後の項目は、治せない可能性を隠さないことだった。
湊は規則へ管理者として署名せず、利用者代表として名前を書いた。医療の判断まで所有者が支配しないためだ。
紙の隣へ、ネーヴェが白い糸で同じ内容を迷宮の壁に刻んだ。
規則を決める会議には患者側の代表も参加した。治療者だけで作れば、待つ側の不安や不便を見落とす。高齢患者は夜間の足元照明を求め、乳児の母親は授乳場所と湯の優先利用を提案した。全てを即座に叶えられなくても、却下理由と見直す日付を紙へ残した。
壁の規則は子どもにも読める言葉へ書き直し、難しい医療語には絵と説明を添えた。守る内容を理解できる形にする。
規則の変更履歴も消さず、日付と提案者、変更理由を裏面へ残した。
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