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世界の声が鳴る前に、俺たちは十のダンジョンを攻略していた――崩壊した日本で家族を守る高校生たちの拠点防衛記  作者: 竜太郎


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澪の五時間

【本文】

 病院との連携が整い、澪の治療を五時間へ延ばす日が来た。

 繭を開く前に、輸血、酸素、止血器具、保温、ネーヴェの糸を揃える。由香と病院の外科医も立ち会った。

 《遅延再生》を五時間動かすと、腹部の古傷が深く開いた。血圧が下がり、モモが毒素を吸う。小春は観測した損傷を医師へ伝え、医師が現実の処置を選ぶ。

 能力だけでも、医学だけでも足りない。

 途中で世界の声が治癒ポイントによる即時修復を提示した。代価は澪の第二迷宮所有権。湊は本人へ選択を見せる。

 澪は拒否した。迷宮を手放したくないからだけではない。世界の声へ治療を委ねれば、何を修復し、何を奪うか確かめられない。

 五時間後、損傷の一部は現在の傷として治療された。残余時間は二十七日と十八時間。

 減ったのは五時間だけ。それでも治した部分は繭へ戻しても消えない。

 澪は青ざめた顔で、次は六時間にすると言った。

 小春は記録を見てから決めると答え、約束しなかった。

 治療中、第二迷宮の扉が二度揺れた。所有者の痛みに核が反応し、共同領域を閉じようとしている。千鶴が澪の事前承認を使い、避難通路を維持した。医療班だけでなく、所有権を支える管理班がいなければ処置を続けられない。澪の心拍と同じ欄へ、第二迷宮の隔離率も一分ごとに記録された。

 処置終了後、輸血量とモモの縮小量、ネーヴェの糸の本数を前回と比較した。次の六時間を感覚で決めない。

 外科医は治療できた組織と未処置の損傷を画像へ分け、次回触れてはいけない位置も小春と共有した。澪が繭へ戻る前に本人へ説明する。

(次話へ)

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