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世界の声が鳴る前に、俺たちは十のダンジョンを攻略していた――崩壊した日本で家族を守る高校生たちの拠点防衛記  作者: 竜太郎


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熱の出た子ども

【本文】

 出産の翌日、避難区画の子ども三人が発熱した。

 同じ食事を取り、同じ遊び場にいた。感染症なら百人以上へ広がる可能性がある。

 小春は《状態観測》で原因を断定しなかった。能力に見えるのは現在の異常であり、病原体の種類まで分かるわけではない。

 三人を別区画へ移し、世話をする大人を固定する。食器とタオルを分け、通路の出入りを記録した。モモの全体治癒は使わない。症状だけを消せば感染が見えなくなる恐れがある。

 病院から検査道具を運び、由香が鼻腔検体を採った。結果が出るまで、同じ遊び場にいた子どもたちも体温を測る。

 原因は地上でも流行していた普通のウイルスだった。

 普通だから安全ではない。喘息のある結衣には重症化の危険がある。環は吸入薬を手元へ置き、接触を避ける。

 二日目、三人の熱は下がり始めた。隔離をすぐ解除せず、症状のない期間を確認する。

 迷宮の敵ではなく、以前から存在する病気も地下へ入る。

 医療区画は戦闘の傷だけを治す場所ではないと、全員が改めて知った。

 隔離された子どもへは、佳乃が扉越しに本を読んだ。防護具を怖がらせないよう、着る前に何をする服か説明する。母親たちにも体温表を渡し、熱がない兄弟を別区画で見守ってもらった。感染を持ち込んだ家族を責める声が出ないよう、誰でも発症し得ることを由香が食堂で話した。

 三人の家族には検査結果と隔離解除の条件を同じ言葉で説明した。家庭ごとに違う噂が広がるのを防ぐ。

 遊び場と通路は清掃粘体だけに任せず、人間が消毒濃度と接触時間を測って仕上げた。

(次話へ)

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