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世界の声が鳴る前に、俺たちは十のダンジョンを攻略していた――崩壊した日本で家族を守る高校生たちの拠点防衛記  作者: 竜太郎


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薬を分ける資格

【本文】

 病院の薬品庫には、地域網が必要とする薬が残っていた。

 だが病院側にも患者がいる。環は在庫を半分にするような単純な分配を拒んだ。

 患者ごとの使用予定を三日分並べ、代替薬の有無、次の入荷見込み、保存期限を確認する。地域網からは食料、清潔な水、保冷設備を提供し、病院から薬だけを持ち出す形にしない。

 世界の声は取引へポイントを付けると通知した。相手が困っているほど高得点になる仕組みだった。

 湊はポイント受領を拒否する。必要な交換を、弱みにつけ込んだ利益へ変えさせない。

 病院事務は正式な伝票を作った。インスリン、吸入薬、抗てんかん薬、抗菌薬。数量と患者名、返還ではなく使用報告を残す。

 結衣たちの吸入薬は合計六本へ増えた。

 それでも一人一年分には遠い。環は安心という言葉を使わず、次の不足予定日を七日延ばせたと説明する。

 地域網から病院へ、冷却粘体二体と非常食五十食を送った。生き物は所有物ではないため、嫌がれば戻れる通路も開く。

 薬を得た側と渡した側ではなく、次の一週間を互いに支える二つの医療拠点になった。

 世界の声は、拒否したポイントを何度も画面へ表示した。取引相手の不足度、薬の希少性、交渉で減らした数量が高得点として並ぶ。環は画面を薬品庫の担当者にも見せた。隠して断るより、何を拒んでいるか共有する。病院側も同意し、必要量を多く見せてポイントを稼ぐ提案を退けた。

 薬の箱はゴーレムへ任せきらず、環が封印を確認して同行した。到着後は由香と二人で数量を再確認する。

 運搬中の温度も十分ごとに記録した。

(次話へ)

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