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世界の声が鳴る前に、俺たちは十のダンジョンを攻略していた――崩壊した日本で家族を守る高校生たちの拠点防衛記  作者: 竜太郎


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二つの肺

【本文】

 第七迷宮と病院の酸素系統は、一つの分岐弁で繋がれた。

 鳥居奈々が無線越しに配管図を読み、鉄平が迷宮の炉で継手を作る。岳とゴーレムが病院地下へ運び、環が地上側の技師と接続した。

 弁の片側は人間の病室、もう片側はモンスター治療区画へ続く。どちらかの消費が増えれば、中央の青い印が赤くなる。

 ネーヴェは自分の患者への供給を減らした。眠る影獣たちの呼吸が浅くなる。小春は人間側の不要な流量を一つずつ下げ、赤い印を黄色へ戻した。

 誰か一人の決断では調整できない。病院の医師、看護師、施設技師、第七迷宮のネーヴェ、地域網の小春と環。五か所から状態を報告し合う。

 湊は《分配》で余力を移そうとしたが、生命力を酸素へ変えることはできなかった。能力にも代替できないものがある。

 午後、別の病院から患者受け入れ要請が届く。病床も酸素も足りない。それでも状態の安定した患者を地域網へ移せば、空いた場所へ重症者を入れられる。

 第七迷宮の未使用区画を、人間用の臨時病床へ変える計画が立った。

 二つの肺を繋いだ配管は、救う場所そのものを広げ始めた。

 分岐弁には、どちらか一方が止まった場合でも全閉しない安全具を付けた。停電時は岳が手動で開閉し、由香とネーヴェの双方から合図がなければ流量を変えない。言葉を話さないネーヴェの合図は白い糸の本数で統一する。一つは維持、二つは不足、三つは緊急。異なる世界の治療者が、同じ配管を通して手順を共有した。

 弁の横には地上と迷宮双方の流量表を置き、片方だけを見て調整できないようにした。記録は一時間ごとに交換する。


(次話へ)

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