↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界の声が鳴る前に、俺たちは十のダンジョンを攻略していた――崩壊した日本で家族を守る高校生たちの拠点防衛記  作者: 竜太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
74/372

残り三本

【本文】

 世界公開から三日目の朝、結衣が咳き込んだ。

 発作ではない。地下の乾いた空気と、眠れない夜が喉へ負担を掛けている。吸入薬は三本残っているが、避難者百四十一人の中には同じ薬を必要とする子どもが二人いた。

 環が薬の使用回数を数える。一人分なら数週間。三人で共有すれば、次の補充前に尽きる。

「私のを使っていいよ」

 結衣は言った。湊はすぐ頷かなかった。優しさだけで薬を分ければ、妹の発作時に足りなくなる。

 小春は三人の処方量と症状を確認し、共用にはしなかった。それぞれの吸入器へ名前を付け、緊急用一本だけを医療区画で管理する。感染を防ぐため器具も分ける。

 県立病院には薬の在庫があるはずだ。しかし病院は非常電源で稼働し、救急患者が押し寄せている。奪いに行くことはできない。

 安西が病院との無線を試す。応答は断片的で、酸素供給設備の異常と、地下入口周辺で負傷者が出たことだけが聞こえた。

 第七迷宮の白衣母ネーヴェが、病院側の扉を細く開く。向こうから消毒液と煙の匂いが流れ込んだ。

 薬を取りに行く前に、止まりかけた病院を助けなければならなかった。

 医療区画では、薬の残数だけでなく発作を起こしやすい場所も地図へ記した。粉塵の多い工事区画、冷気の漏れる通路、人が集中する食堂。薬を増やすまで待つのではなく、使わずに済む環境を先に直す。結衣は自分の症状を説明し、同じ喘息の二人へ吸入器の使い方を見せた。子どもだからと記録から外さなかった。

 吸入薬には残量だけでなく、開封日と使用回数も書いた。見た目が残っていても規定回数を越えれば正しい量が出ない。


(次話へ)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。