燃料が来ない朝
【本文】
高速道路の封鎖により、町への燃料供給が止まった。
消防車、救急車、発電機、物流車両。全てが同じ軽油とガソリンを奪い合う。工場の備蓄を使っても数日しか保たない。
鉄平は迷宮の炉で燃料を作れないか調べた。廃油を精製する機能はあるが、必要な熱量のほうが大きい。無から生み出す方法はない。
安西は救助車両を出動優先度で分けた。歩ける距離には車を使わず、運搬型ゴーレムと自転車を回す。救急車は生命危機の患者に残す。
避難者から、自家用車の燃料を提供する申し出が出た。強制徴収にはしない。量を記録し、将来返還できる権利証を発行する。
奈々は浄水場の非常発電を間欠運転へ変え、セレネの冷却経路で薬品庫の負荷を下げた。迷宮設備が燃料の代わりになるのではなく、消費を減らす。
夕方までに、地域全体の使用量は前日の半分になった。
それでも燃料の備蓄は減り続ける。
湊は燃料残日数を隠さず掲示した。節約へ協力してもらうには、足りない現実を全員が知る必要があった。
燃料提供の権利証には量だけでなく、車を動かせなくなった場合の代替移動も書いた。燃料を渡したせいで避難できない人を作らないためだ。運搬型ゴーレムの利用順と、緊急時に車両へ燃料を戻す条件も決める。善意を受け取る側にも、その後の生活を守る責任があった。
鉄平はゴーレムの充電にも炉の熱が必要だと告げた。代替手段にも消費があり、便利な順に使えば新しい不足が生まれる。
人力、自転車、ゴーレム、車両の順ではなく、距離と患者の状態で手段を選ぶ一覧が作られた。
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