母親たちの夜
【本文】
榊原真理は、眠れない子どもを集めて第二区画にいた。
地上から爆発音が響くたび、天井を見上げる子がいる。親と別の入口から避難し、まだ再会できない子も三人いた。
藤代佳乃が名前と家族の特徴を聞き、真理が無線で各入口へ伝える。泣き止ませるために大丈夫とは言わなかった。代わりに、今どこを探しているか、次の連絡は何時かを伝えた。
五歳の少年は、母親が自分を置いて逃げたと思っていた。
真理は否定できない。何が起きたか見ていないからだ。少年の手を握り、母親が来たとき渡せるよう、一緒に紙へ車と家の絵を描いた。
午前三時、薬局入口から女性が保護された。額に怪我をし、片方の靴を失っている。少年の母親だった。
再会した二人は泣き、周囲の子どももつられて泣いた。
真理は名簿の二つの名前を線で結ぶ。残る二人にも、探している家族の欄がある。
避難者数や収容上限には現れない仕事だった。
夜が明けても、真理と佳乃は次の定時連絡まで子どもたちのそばに残った。
親の所在が分からない二人についても、地上救助班から情報が届いた。一人の父親は公的避難所で確認され、迎えの経路を調整する。もう一人は連絡がない。真理は結果の違う二人を同じ場所へ座らせず、知らせる順番と付き添う大人を決めた。良い報告が、隣の子をさらに孤独にすることもある。
子どもたちが眠ったあと、真理と佳乃は泣いた人数ではなく、水を飲めたか、薬を使ったか、眠れたかを記録した。
引き継ぐ大人が来るまで二人同時には休まず、翌朝から交代できる避難者を募った。
(次話へ)




