中立という罪
【本文】
政府の緊急放送が、陣営選択について説明した。
国民は人類陣営を選び、迷宮攻略へ協力すること。迷宮陣営と中立を選んだ者は、保護対象外となる可能性がある。
地域隔離網の百三十人は《選択保留》のままだった。
放送を聞いた避難者の一部が不安を訴える。人類を裏切ったと思われれば、自衛隊や警察に逮捕されるのではないか。今から人類陣営を選ぶべきだという声も出た。
湊は選択を強制しなかった。地域網を出れば、各自で陣営を決められる。人類を捨てたわけではなく、迷宮を敵と決めつける通知に従わないための保留だと説明する。
一家族四人が人類陣営を選び、地上へ戻ることを望んだ。
千鶴は食料と水を二日分渡し、最寄りの公的避難所までの安全経路を調べた。考えが違うことを理由に物資を取り上げない。
家族が入口を出た瞬間、世界の声が告げた。
『人類陣営四名を確認。中立地域からの離脱報酬を付与します』
家族は報酬を拒否できなかった。
湊たちを裏切れば得をする仕組みが、既に作られていた。
地上へ戻る一家の子どもは、結衣へ謝った。どちらを選べば正しいか分からず、父親についていくと言う。結衣も引き止めず、自分の予備マスクを一枚渡した。選択した陣営が違っても、昨日まで同じ町で暮らしていた事実は消えない。入口が閉じたあと、二人の名前は名簿から削除せず、離脱時刻と行先を記した。
離脱報酬は四人へ技能点として加算された。家族は喜ばず、何かを売ったような顔で公的避難所へ向かった。
安西は家族の到着予定を公的避難所へ伝え、途中の危険地点も共有した。
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