止まった給食センター
【本文】
千鶴が勤める給食センターは、停電と道路封鎖で稼働を止めた。
冷蔵庫には肉と野菜、倉庫には米と調味料が残っている。放置すれば腐り、避難所へ運べば何日分もの食料になる。
千鶴は元同僚三人と連絡を取り、施設長の許可を得た。混乱に紛れて持ち出すのではない。数量、搬出先、使用目的を記録し、後から確認できる形にする。
地上道路は使えない。第九迷宮の物流経路を給食センター近くまで伸ばすには、オルドが施設を配送拠点として認識する必要があった。
千鶴たちは空の食缶を手で運び、入口から倉庫まで三往復した。食缶に残る匂いと配送印をオルドへ登録する。
四回目、壁に新しい小扉が開いた。
ゴーレムが米袋を地下へ運び、冷却粘体が生鮮品を第六迷宮へ送る。全量を持ち出さず、地域の別避難所へ渡す分も残した。
給食センターは止まったままだった。
それでも献立表、在庫管理、食缶、働いてきた人の手順は地下で新しい配給所へ引き継がれた。
千鶴は最後に施錠し、鍵を施設長へ返した。
地下の配給所では、給食センターと同じ衛生手順を守った。手洗い、水温、加熱時刻、試食保存。非常時だから省略すれば、百人単位の食中毒を起こす。停電した冷蔵庫の食材は匂いだけで判断せず、小春が状態を観測し、疑わしい物は使わなかった。食料不足でも危険な一袋を混ぜない。
最初の炊飯が終わるまで、千鶴は温度計から離れなかった。大量調理は一鍋の失敗が百人へ広がる。
調理後の試食一食分は密封し、日時を書いて冷却室へ保存した。異常が出た時に原因を追えるようにするためだった。
(次話へ)




