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世界の声が鳴る前に、俺たちは十のダンジョンを攻略していた――崩壊した日本で家族を守る高校生たちの拠点防衛記  作者: 竜太郎


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空から消えた火

【本文】

 各国が大型ダンジョンへ重火器を使い始めた。

 通常爆弾は入口へ届く前に方向を変え、無人地帯へ落ちる。誘導装置の故障ではなく、空間そのものが攻撃を避けていた。

 正午、海外の荒野で核弾頭が使用された。

 映像は軍事衛星と民間観測所から同時に配信される。閃光が生まれる直前、弾頭だけが白い粒へ分解し、熱も衝撃も放射線も残さず消えた。

『隔離槽保護規定により、広域破壊を無効化しました』

 旧管理音声が、地域隔離網にも一瞬届いた。

 直後、冷たい世界の声が告げる。

『迷宮陣営による防衛成功。人類陣営へ損失を計上します』

 同じ現象を、保護ではなく戦争の得点へ置き換えている。

 各国政府は核兵器が無効化された事実を公表せず、通信障害による実験中止と説明した。だが映像は既に世界へ拡散している。

 避難所では、迷宮が核より強いという噂が広がった。

 湊は強いのではなく、隔離壁を壊させない規則だと説明する。証明はできない。それでもモモは、消えた地点を見て「まもった」と言った。

 迷宮は人類を滅ぼすためなら、核攻撃を無効にしたあと反撃できたはずだった。

 反撃しなかった事実を、湊は記録した。

 冬一は旧管理音声と世界の声を別々に録音した。同じ出来事を、片方は保護規定、片方は防衛成功と呼んでいる。言葉が違えば、人は受け取る意味まで変える。朔は波形を比較し、二つの声が同じ通信経路を使いながら発信源は異なるという仮説を台帳へ加えた。

 避難者の中には核が消えたなら勝てないと怯える者もいた。湊は勝敗ではなく、攻撃が町へ返らなかった事実を繰り返した。


(次話へ)

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