軍が消えた入口
【本文】
午前六時、県内の駐屯地から部隊が出動した。
目標は高速道路のインターチェンジに現れた大型入口。表示は『0/8』だったが、数字を見える隊員は一人しかいなかった。
安西は現場の消防隊を通して人数制限を伝えた。指揮官は情報を聞いたものの、民間由来の未確認情報として、二十名の先遣隊を投入する判断を変えなかった。
八人が境界を越えたところで扉が閉じる。残る十二人の前から入口が消え、代わりに五キロ離れたサービスエリアへ現れた。
内部へ入った八人は戻らない。
攻撃も遺体も見えない。ただ部隊だけが地上から消えた。
政府は入口の瞬間移動を敵の攻撃と発表し、周辺を封鎖する。高速道路は上下線とも閉鎖され、救援物資を積んだトラックが列を作った。
湊たちの地域へ向かう燃料車も、その列の中にいる。
朔は匿名資料を送った責任を感じた。読まれなかった情報は、存在しなかったのと同じに思えた。
冬一は否定する。届かなかった理由、信じられなかった理由を記録すれば、次の現場では伝え方を変えられる。
朔は資料へ、人数超過で入口が移るまでの映像と時刻を追加した。
救えなかった八人を、失敗例という数字だけにはしなかった。
残った十二人の隊員は入口の再出現地点へ向かおうとしたが、高速道路の封鎖で移動できなかった。指揮系統は内部の八人を救う命令と、周辺住民を避難させる命令の間で揺れた。現場消防は返答を待たず、サービスエリアの利用客を徒歩で退避させた。命令が届くまでの時間も、地上では被害になる。
入口の外には八人分の装備だけが残った。朔は所属ではなく、映像から読めた一人ずつの識別番号も保存した。
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