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世界の声が鳴る前に、俺たちは十のダンジョンを攻略していた――崩壊した日本で家族を守る高校生たちの拠点防衛記  作者: 竜太郎


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前日の買い物

【本文】

 公開前日、町はいつもどおりだった。

 スーパーには夕食の材料を選ぶ人が並び、学校では夏休みの部活動が続く。湊は千鶴と不足品を買った。塩、電池、生理用品、乳児用ミルク。棚を空にしない数量だけを選ぶ。

 未来を知っているからと買い占めれば、今日必要な人から奪うことになる。

 レジの店員は大量の電池を見て、防災訓練ですかと笑った。千鶴も笑って頷く。

 午後、十基の最終点検を行った。水質、炉、保冷室、医療糸、物流印。異常はない。空欄報酬も変化しない。

 点検表には担当者だけでなく、代行者の名も書いた。誰かが怪我をしても作業が止まらないよう、奈々は岳へ水門の読み方を教え、鉄平は安西へ炉の緊急停止を見せる。専門家と同じ仕事はできなくても、危険な状態で止めることだけは共有した。

 澪は繭の中。残余時間は二十六日と二十二時間で停止している。結衣の吸入薬は三本。発電用燃料は節約して四十日分。食料は百二十人で十八日分だった。

 十分ではない。それでも数字を飾らず記録した。

 夜、家族は自宅で夕食を取った。避難所ではなく、いつもの食卓を選んだ。

 モモは魚肉ソーセージを半分食べ、残りを結衣の皿へ押した。

 零時まで一時間。町の灯りは、まだ一つも消えていなかった。

 不足欄には赤線を引き、公開後に確保する物資を順番に並べた。希望ではなく不足を共有するための表だった。

 結衣は自分の避難袋を自分で点検し、薬の期限を読み上げた。守られる側にも準備へ参加できる仕事がある。

 結衣は袋を玄関へ置かず、普段から持ち出せる場所を家族と決めた。予備薬の場所も全員で確かめる。

(次話へ)

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