所有者が眠るとき
【本文】
澪が繭へ入ると、第二迷宮の扉が不安定になった。
共同領域に設定した避難解放規則が働き、内部にいた全員は第一迷宮へ移された。だが収容上限は百二十人から百十七人へ減り、第二迷宮の保管水も取り出せない。
所有者一人へ依存する危険が、数字になって現れた。
湊が眠った場合も同じことが起きる。十基のうち直接所有する第一迷宮と、湊の承認を必要とする設備が停止する。
試験として湊が核との接続を十分だけ切ると、第一迷宮の照明が半分消えた。登録済みの扉は動いたが、新しい避難者を認証できない。朔は停止した機能と継続した機能を秒単位で記録し、一人へ戻さなければならない権限だけを洗い出した。
家族会議で、千鶴は管理権限を役割ごとに分けるよう求めた。保管は四人、炉は鉄平と岳、医療は環と小春、浄水は奈々、物流は千鶴と安西。湊がいなくても七十二時間は維持できる設定へ変える。
空欄報酬を使えば全権限を分配できそうな感覚があった。それでも湊は触れなかった。効果も代価も不明な力を、澪の危機を理由に解放しない。
第二迷宮には、澪が事前に残した承認記録があった。緊急時に限り、モモが扉を固定できる。
モモは金色の点を使い、白い通路を繋ぎ止めた。そのぶん言葉が減り、食事をしても元の大きさへ戻らない。
誰かの代わりを一人へ背負わせれば、同じ弱点を作るだけだった。
権限表は紙でも三部作り、学校、工場、医療区画へ置いた。端末が止まっても担当と停止手順を確認できる。
さらに各設備には手動停止札を付け、異常時は復旧より人の退避を優先すると全担当者で確認した。
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