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世界の声が鳴る前に、俺たちは十のダンジョンを攻略していた――崩壊した日本で家族を守る高校生たちの拠点防衛記  作者: 竜太郎


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初回接触報酬

【本文】

 声と同時に、湊の視界へ半透明の文字が広がった。

『初回接触報酬を選択してください』

 並んだ候補は三つ。《筋力補正》《刃物適性》《分配》。意味の説明はない。

 考える時間もなかった。湊は最後の文字へ意識を向けた。

 工具箱の蓋を構えていた岳の腕に、湊の手の感覚が重なる。自分の握力が半分抜け、その分だけ岳の腕へ流れ込んだ。

「うおっ……!」

 岳が蓋ごと黒い子獣を押し返した。朔が消火器を噴射し、白煙に包まれた獣の脚へ小春がロープを巻く。四人で引くと、今度は床へ倒せた。

湊は鉄棒を両手で握り、青白い光の間へ振り下ろした。

一度では止まらない。二度、三度。やがて黒い輪郭が崩れ、小石ほどの青い結晶だけが残った。

結晶は冷たいはずなのに、近づけた掌には生き物の吐息のような熱が触れた。

 誰も勝利を喜ばなかった。小春の膝から血が滲み、岳の左腕には三本の裂傷が走っている。

「傷を洗う。ここでは縫えないから、圧迫して固定する」

 小春は震える指で処置を始めた。

 湊は《分配》の感覚を確かめた。力だけではない。痛みや疲労まで渡せそうな気配がある。しかし受け取る相手の同意がなければ、細い壁に阻まれた。

 朔が青い結晶を袋へ入れると、壁の光が一段明るくなった。消えていた蛍光テープとロープが、何事もなかったように元の通路へ戻る。

 そして四人の頭に、先ほどと同じ冷たい声が響いた。

『初回討伐を確認。報酬は個体ごとに付与されます』

岳たちの前にも三つずつ選択肢が浮かんでいる。

通路の奥では、同じ青白い光が一つずつ灯り始めた。

 湊は声を聞きながら、なぜか入口で届いた無記名の通知を思い出していた。

(次話へ)

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