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世界の声が鳴る前に、俺たちは十のダンジョンを攻略していた――崩壊した日本で家族を守る高校生たちの拠点防衛記  作者: 竜太郎


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モモの故郷

【本文】

 山間の廃駅には、線路も駅舎も残っていた。

 十年前に廃線となり、ホームは草に覆われている。待合室の時刻表だけが、存在しない零時零分の列車を示していた。

 入口の数字は『0/1』。

 一人しか入れない。モモは湊の肩から降り、改札前で震える。

『ここ、モモの。たぶん』

 澪や仲間を連れていけない。湊は外に《帰還標》を刻み、安西たちへ一時間で戻らなければ第一迷宮を閉じないよう頼んだ。

 零時になると、錆びたレールの向こうから光が近づいた。音のない一両列車がホームへ停まる。扉の先は車内ではなく、白い円形室だった。

 中央には空の台座があり、《M-00保守核格納部》と刻まれている。

 円形室の壁には、モモと同じ桃色の小さな印が無数に並んでいた。一つずつ役割が違い、水、火、治療、輸送を示している。最上段の印だけが削り取られ、黒い傷になっていた。モモはそこを見上げても名前を思い出せない。

 湊は映像と刻印を端末へ記録したが、外へ送信はできなかった。

 モモが台座へ乗ると、金色の光が室内を走った。壁に、無数の迷宮が黒い海を囲む映像が浮かぶ。その中心で一つの核が砕かれ、欠片が遠い世界へ落ちていく。

『かえった。でも、たりない』

 モモの記憶は戻らない。台座にも中枢核は存在しない。

 冷たい声が室内へ割り込んだ。第一迷宮より近く、白い部屋そのものが喋っているように響く。モモは湊の服へ潜ろうとしたが、台座から離れられなかった。

『未登録権限を検出。消去します』

 白い壁から黒い根が噴き出した。

 湊はモモを抱え、たった一人で逃げ道を探した。

(次話へ)

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