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世界の声が鳴る前に、俺たちは十のダンジョンを攻略していた――崩壊した日本で家族を守る高校生たちの拠点防衛記  作者: 竜太郎


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倉庫を歩く壁

【本文】

 第九迷宮は大型倉庫の荷物搬入口に現れた。

 週末の入荷前に倉庫を空け、湊、岳、朔、千鶴、安西が入る。内部には壁が何層も並び、通路がゆっくり動いていた。

 荷物を追って配置を変える迷宮だった。冠位個体《搬守オルド》は、無数の脚を持つ巨大な台車の姿をしている。

 問題は、黒い根が行先の印を書き換えていることだった。食料は燃焼室へ、燃料は医療区へ、薬は湿った区画へ運ばれている。公開後に大量の物資が流れ込めば、誤配送だけで拠点が崩れる。

 千鶴は給食センターの配送表を使い、物資を六分類した。名前ではなく、保存温度、危険性、使用期限、優先度で印を作る。文字を読めないゴーレムやスライムにも分かる形と凹凸を加えた。

 試しに空箱を百個流すと、三個が誤った通路へ入った。根を除いただけでは直らない。古い行先情報が壁へ残っていた。千鶴は失敗した箱へ赤い紐を結び、共通点を探す。全て以前に燃料を入れていた箱だった。

 臭いまで記録されると分かり、洗浄手順も追加した。

 朔が壁の移動周期を読み、岳が誤った通路を固定する。安西は根を耐熱袋へ回収した。湊は《領域編集》で新しい印を迷宮へ登録する。

 オルドは空の荷台を一周させ、全て正しい区画へ届けた。水、包帯、空の燃料缶を載せても結果は変わらなかった。

『第九隔離槽、物流機能を再開します』

 千鶴は喜ぶ前に、誤配送時の停止手順を作った。正しく動く仕組みほど、止め方を知らなければ危険になる。

 地域隔離網は、これで九/十だ。

 残る最後の金色の点は、山間の廃駅だけとなった。

(次話へ)

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