表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界の声が鳴る前に、俺たちは十のダンジョンを攻略していた――崩壊した日本で家族を守る高校生たちの拠点防衛記  作者: 竜太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
44/360

治療の代価

【本文】

 ネーヴェの背中から黒い根を抜くには、治療区画の生命力が足りなかった。

 冷たい声は、人間一人の生命力を差し出せば即座に完了すると告げた。小春は選択肢を閉じる。誰かを犠牲にする治療は受け入れない。

 モモがネーヴェへ近づいたが、全体治癒を使えば再び小さくなり、記憶まで失う可能性がある。湊は止めた。

 環は治療区画に眠る個体の状態を一覧にした。軽傷の個体へ使われている生命力を一時的に減らし、重傷者へ回す。人間の病院でも、限られた人員と設備を重症度で配分する考え方がある。

 十九体すべてへ同じ量を求めれば安全に見える。だが必要量は違う。小春は一体ずつ最低限を示し、環が紙へ書く。数字が一つ変わるたび全体を計算し直し、誰か一体へ負担が偏っていないか確かめた。

 湊の《分配》を迷宮設備へ接続する。小春の観測で安全限界を見ながら、十九体から少しずつ余力を借りた。負担は湊にも返り、全身から力が抜けていく。

 ネーヴェの黒い根が一本ずつ剥がれた。十九体の呼吸が同時に浅くなり、小春は一度中止を告げる。数値が戻るまで待つしかない。

 最後まで抜く必要はない。自力で治療できる状態へ戻したところで分配を止める。完全を求めて全員を危険にしない判断だった。

『第七隔離槽、治療機能を再開します』

 ネーヴェは白い糸を湊の手首へ巻いた。《生命分配の過負荷を警告する印》だった。

 地域隔離網は、七/十だ。

 地上へ戻ると二時間が経過し、湊は廊下の椅子から立てなかった。治す側にも必ず限界があることを、小春は台帳の最初に書いた。

(次話へ)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ