父の作業台
【本文】
榊原鉄平は、地下に並んだ十体のゴーレムを見ても、最初に寸法を測った。
息子たちは魔法の兵士を見る目をしていたが、鉄平には整備を待つ機械に見える。関節の隙間、重心、指の太さ。人型のままでは工場の狭い通路で邪魔になる。
ベルクへ紙の図面を見せると、胸の炉が青く明滅した。理解しているらしい。
一体目は四脚の運搬型へ変えた。低い荷台を背に設け、怪我人を揺らさず運べる。二体目は腕を短くし、瓦礫の下へ入る救助型。三体目には水槽を背負わせ、火災現場で使う。
試運転では運搬型が曲がり角へ肩をぶつけた。図面上の幅だけでなく、荷物を載せたときの膨らみまで考える必要がある。鉄平は失敗した外装を炉へ戻し、岳と一緒に幅を五センチ削った。迷宮の力でも、一度で完成はしない。
ポイントだけでは形を変えられない。鉄平が図面を引き、人間の工具で部材を作り、ベルクが迷宮の炉で接合する。どちらか一方では完成しなかった。
岳は負傷した左腕を庇いながら、父の隣で部品を磨いた。
「俺、盾役なんだ」
「知ってる」
「止めないのか」
鉄平は手を止めた。止めたいに決まっている。だが息子が仲間の前へ立つ理由も、怪我を隠してまで戻ろうとした弱さも知った。
「盾は殴られる役じゃない。後ろの奴を帰す道具だ。壊れたら仕事にならん」
岳は黙って頷いた。
鉄平は息子用の盾を作業台へ置いた。車の防護材と迷宮の再生鉄を重ね、内側には衝撃を逃がす可動部を仕込んである。
親ができるのは戦場へ送り出すことではない。帰るための道具を、手を抜かず作ることだった。
(次話へ)




