備蓄を数える
【本文】
第四迷宮の冠位個体は、中央室の天井から降りてきた。
六本の腕を持つ白い石像で、顔の代わりに秤が埋め込まれている。《庫守リブラ》と表示された。敵意はなく、空になった保管室を順番に示す。
保守委任の条件は、六室へ用途の異なる物資を一つずつ登録することだった。
湊たちは地上へ戻り、学校の備蓄品を勝手に使わず、校長と市の防災担当へ説明した。迷宮の全ては話せない。安西が床下の特殊保管設備を消防で確認したと証言し、試験用の少量だけを借りた。
水一本、乾パン一袋、毛布一枚、乾電池、救急包帯、野菜の種。六室へ置くと、リブラの秤が釣り合う。
水滴の室は一定温度、月の室は光を遮り、芽の室には僅かな湿り気がある。千鶴は置いた時刻と期限を記し、一日後、一週間後、一か月後に状態を確かめる札を付けた。便利という印象だけで大量の備蓄を移すことはしない。
『保管対象を確認。管理責任者を登録してください』
湊一人ではなく、校長、安西、千鶴を含む四人を登録した。取り出しには二人以上の承認が必要と決める。所有者が気分で配給を変えられない仕組みにした。
リブラが腕を動かすと、登録した水が四本に分かれたように見えた。しかし取り出せたのは元の一本だけ。増殖ではなく、四つの避難口から同じ在庫へ接続できる表示だった。
迷宮は物を生み出さない。運び、保ち、必要な場所へ渡す。
湊はその制限に安心した。何でも作れる力なら、奪おうとする者も現れる。今ある一本を誰へ渡すか決める設備なら、人間側にも責任が残る。
第四迷宮は地域隔離網へ接続され、表示は四/十へ変わった。
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