眠る六つの部屋
【本文】
第四迷宮の本格調査は、夏休み初日の早朝から静かに行われた。
体育館地下の備蓄倉庫には、湊、岳、小春、朔、澪、安西の六人が入る。壁の数字と同じ人数だった。入口を越えると、体育館の床音が消え、六角形の広間へ出た。
朔が以前捉えたとおり、中央室を六つの空洞が囲んでいる。扉には水滴、炎、風、土、芽、月の印が刻まれていた。どれも閉じ、敵の気配はない。
モモが中央の台へ乗る。
『ここ、しまう。くばる』
壁へ触れた湊の視界に《物資保管槽》と表示された。六室は食料、燃料、水、医薬品などを劣化させず保管し、必要な避難所へ分配する設備らしい。
ただし土の扉だけが黒い根に塞がれていた。無理に切れば、保管中の物資へ汚染が広がる。小春が根の状態を観測し、岳が周囲の石枠を固定する。朔は壁内の空洞を探し、根の下を通る細い排出路を見つけた。
湊は《領域編集》で排出路を開く。澪が根を槍で持ち上げ、安西が耐熱袋へ誘導した。袋へ収めた根は灰にならず、内部で人の声のような音を立て続ける。袋は第四迷宮の封鎖室へ置き、持ち出さないと決めた。
袋の表面には、触れていない指の跡が内側から幾つも浮かんだ。安西は無線越しに時刻を読み上げ、朔が音を記録する。小春は誰にも素手で触れないよう念を押した。倒すべき敵ではなく、扱い方すら分からない危険物として運ぶ。
破壊せず隔離したことで、六つの扉が一斉に開いた。
『第四隔離槽、保管機能を再開します』
学校の下に眠っていたのは戦場ではなく、地域の大切な備えを失わせないための倉庫だった。
(次話へ)




