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世界の声が鳴る前に、俺たちは十のダンジョンを攻略していた――崩壊した日本で家族を守る高校生たちの拠点防衛記  作者: 竜太郎


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五つ目と六つ目

【本文】

 第四迷宮を監視し始めて二日後、反応が二つ増えた。

 一つは岳の父が営む整備工場の地下。もう一つは環が勤める薬局の冷蔵庫の奥だった。

 偶然とは考えにくい。迷宮は、湊たちが守ろうとしている場所を選ぶように現れている。順番まで、こちらの準備と覚悟を試すようだった。

 整備工場の入口は『0/5』、薬局は『0/4』。どちらも待機中で、触れなければ開かない。

「俺たちを誘ってるのか、必要な場所を避難口に選んでるのか」

 朔は二つの可能性を記録した。

 湊は攻略数を増やす好機だとは考えなかった。学校、工場、薬局を同時に空ければ生活へ影響が出る。まず入口の周囲から燃料や薬品を移し、火災と汚染の危険を減らした。

鉄平は工場地下の入口を見ても仕事を止めなかった。車を一台ずつ外へ出し、重要工具を別倉庫へ運ぶ。環は停電に備え、冷蔵薬を保冷箱へ分散した。

真理は工場を訪れる客へ不安を悟らせず、預かり車の返却日を早める連絡をした。薬局では処方薬を必要とする患者へ前倒しで受け取りを案内する。迷宮を知らない人々も、理由を告げられない準備によって少しずつ守られていった。

 大人たちが動く間、湊たちは三迷宮の信号を比較した。

 学校は一定。工場は機械を動かすと強くなる。薬局は冷蔵庫の温度が上がると反応する。迷宮は周辺の役割を読み取り、その不足を補おうとしているように見えた。

 モモが薬局の壁へ触れる。

『なおす、ところ。まもる』

 冷たい声はまだ何も告げない。

 代わりに三つの入口から、眠る者の呼吸に似た音が同時に聞こえた。

(次話へ)

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