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世界の声が鳴る前に、俺たちは十のダンジョンを攻略していた――崩壊した日本で家族を守る高校生たちの拠点防衛記  作者: 竜太郎


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四つ目は学校の下

【本文】

 共同領域が開いた翌日、二つの核へ同時に新しい反応が届いた。

 場所は湊たちの高校だった。

 夏休み前の校舎には生徒が七百人近くいる。入口が授業中に顕在化すれば、温泉街とは比較にならない混乱になる。

 朔の装置は体育館地下を示した。そこには防災備蓄倉庫があり、水、毛布、簡易トイレが保管されている。迷宮がそれらを取り込めば、町の避難計画まで崩れる。

 湊たちは安西へ連絡し、校長には床下の異常振動として点検を求めた。消防と設備業者が入る間、生徒は体育館の使用を止められた。

 放課後、備蓄倉庫の壁に『0/6』が現れる。

 第一迷宮より一人多い。だが世界の声以前の入口が、次第に人の多い場所へ現れている理由は分からない。

モモは壁へ近づき、首を傾げた。

『ここ、ねてる。まだ、だいじょうぶ』

朔が床へ耳を当てると、反響は体育館の広さを越えて地下へ続いていた。規則正しい振動は、第三迷宮の循環音とも第一迷宮の鼓動とも違う。六つの空洞が花弁のように中央室を囲み、全ての扉が閉じている。

今なら引き返せる。湊はその構造だけを記録し、核へ呼びかけることもしなかった。

 圧力上昇も黒い根の気配もない。攻略を急げば、眠っている機能を起こす可能性がある。

 湊は入口を監視するだけに留めた。安西は備蓄品を別棟へ分散し、万一壁が消えても全てを失わないようにした。

 夜、無人になった体育館で、バスケットボールが一度だけ床を跳ねた。

 監視カメラには何も映らない。

 迷宮核の記録には、《第四隔離槽・待機中》という文字だけが残った。

(次話へ)

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