八人の避難所
【本文】
共同領域の成立により、収容上限は五人と三人を合わせた八人になった。
期待していた十人には届かない。通路や設備を共有しても、空気と水を維持できる生命数は単純な合計以上に増えなかった。
それでも澪の迷宮入口は、第一迷宮から呼び出せるようになった。移動を続けていた扉が、山中の白い通路として固定される。
澪の内部は灰色の岩壁と狭い一室しかなく、保存水と毛布が壁際へ整然と並んでいた。誰にも見つからず傷に耐えた日々の跡だった。千鶴は勝手に片づけず、必要な物を尋ねてから小さな机と照明を運んだ。
千鶴たちは優先順位を組み直した。前の紙は捨てず、変更理由も残した。結衣、冬一、岳、環に加え、小春、朔、千鶴が候補となる。所有者の湊を含め八人。鉄平、真理、澪が地上に残る計算だった。
「私の枠は数えなくていい」
澪が言う。
だが所有者が外に残れば、共同領域の一部が閉じる。本人が不要と言っても、仕組みの側が必要としていた。
鉄平は笑って、自分は工場にいたほうが役に立つと話した。真理も地域住民を置いて逃げられないと言う。
湊は、家族全員が入れるまで迷宮を増やすという考えを改めた。入口へ辿り着けない人、存在を知らない人はもっと多い。数だけ増やしても、助ける手順がなければ安全圏にはならない。
共同領域の最初の部屋へ、八脚の簡易寝台が並べられた。
結衣は自分の場所へ吸入薬と小さな目覚まし時計を置く。
「ここで寝なくていい日が続くといいね」
湊は頷いた。
避難所を作ることと、避難する日を望むことは違っていた。
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