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世界の声が鳴る前に、俺たちは十のダンジョンを攻略していた――崩壊した日本で家族を守る高校生たちの拠点防衛記  作者: 竜太郎


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九百ポイント

【本文】

 共同領域に必要な残り二十四ポイントは、第一迷宮の保守で得ることにした。

 黒い根の小部屋を清掃し、壊れた守護核を修復する。討伐で稼ぐほうが早くても、迷宮を傷つけて得た結晶を再び核へ戻す方法では意味がない。

鉄平が折れた部材の代替品を加工し、朔が内部構造を測る。小春は根の灰が人体へ影響しないか調べ、岳は片腕で運べる荷物を選んだ。澪も自分の迷宮から工具を持ち込んだ。

作業時間は一日二時間までと決めた。迷宮内では時計の進み方が一定とは限らず、疲労の感覚も遅れて現れる。入る前後に体温と脈拍を測り、異常があればその日は中止する。小春と環が決めた規則には、所有者の湊も例外を認められなかった。

 修復に三日かかった。急げば一日で終わる作業を、誰も急がなかった。

 守護核は元の黒い球ではなく、鉄枠に収めた青い結晶として再起動する。周囲の影獣へ排除命令を出さず、入口から最深部までの異常だけを知らせる設定にした。

『保守値三十を確認』

 合計は九百六。

 湊と澪がそれぞれの核へ触れると、《共同領域》が選択可能になった。二つの迷宮を融合せず、入口間に一時通路を作り、収容人数と保守機能を共有できる。

 承認の直前、澪の手が止まった。

「私が死んだら、この迷宮はどうなる?」

 《遅延再生》の残余時間は四十五日。所有者が死亡した場合、所有権は未登録へ戻り、内部の人間が閉じ込められる可能性がある。

 湊は共同領域へ、所有者不在時の避難解放を最優先規則として書き込んだ。

 澪も承認する。

 二つの核の間に、細い白い道が生まれた。

(次話へ)

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