壊さずに得た所有権
【本文】
湊は迷宮核へ触れ、所有ではなく共同管理を求めた。
選択肢には存在しない。澪が隣から核へ手を重ねても、表示は《破壊》《放棄》《所有》の三つだけだった。
モモが二人の手の間へ潜り込む。
『いっしょ。まもる』
金色の光が核へ入り、文字が乱れた。やがて《保守委任》という第四の選択肢が現れる。
第三迷宮の所有権は湊へ移らず、冠位個体ガンゼが保持する。そのうえで湊と澪が保守要員として入口、循環路、避難区画を操作できる仕組みだった。
小春にはガンゼの状態が、敵を示す赤ではなく迷宮設備と同じ青で見えた。朔の探査にも心臓音はなく、井戸、水路、石柱の全てが巨体の内部へつながっている。ガンゼ自身が歩く循環装置なのだと分かる。
支配できる範囲は狭い。召喚もポイントの自由使用もできない。代わりに冠位個体を倒さず、迷宮本来の機能を残せる。報酬より機能を選ぶ仕組みだった。
二人はもう迷わず、同時にそれを選択した。
『第三隔離槽の保守委任を承認。保守値四百を付与します』
ガンゼの背中から黒い紋様が完全に消え、折れた石柱を角から外して元の穴へ戻す。循環粘体たちも井戸へ集まり、残る黒い汚れを吸い始めた。
共同領域の条件表示が更新される。迷宮三基の条件は満たした。湊側の三百五十、澪側の二十六、第三迷宮から得た保守値四百。個人へ付与された分を合わせても、九百には僅かに届かない。
必要なのはあと二十四。
湊たちは迷宮を壊さず、初めて出口を開いた。
その背後でガンゼが短く吠える。警告ではなく、送り出す合図のようだった。
(次話へ)




