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世界の声が鳴る前に、俺たちは十のダンジョンを攻略していた――崩壊した日本で家族を守る高校生たちの拠点防衛記  作者: 竜太郎


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熱を抱えた迷宮

【本文】

 第三迷宮の内部は、湯気に満ちていた。

 入ったのは湊、澪、小春、朔の四人。岳は安西たちと地上に残った。石造りの通路には熱湯が足首まで流れ、奥へ進むほど温度が上がる。

 小春の《状態観測》では、空気中に毒はない。ただし長時間いれば熱中症になる。四人は飲水時刻を決め、十分ごとに壁を叩いた。外からの返答は聞こえない。

 モモが熱湯へ触れると、嬉しそうに広がった。しかし壁の黒い筋へ近づくと、すぐ湊の肩へ逃げる。湯だけは好きらしい。

最初の広間には、半透明のスライムが十体いた。敵意はなく、湯を吸っては別の水路へ運んでいる。湊の視界に《循環粘体》と表示された。

一体が小春の靴へぶつかり、持ち上げてほしそうに震えた。水路の縁が崩れ、自力では向こう側へ渡れない。小春が両手で運ぶと、その個体は熱い湯を吐き出し、仲間と同じ流れへ戻った。通路脇には乾いて動かなくなった個体もいる。モモが触れても蘇らず、透明な殻だけが薄く残った。

「こいつらが止まったら、熱が溜まる」

 朔の探査は床下に巨大な空洞を捉えた。熱源はさらに下だ。迷宮全体が温泉の熱を別の場所へ逃がしているらしい。

 通路の先で黒い影獣が循環粘体を襲っていた。倒された個体が水へ溶けるたび、湯の温度が上がる。

 澪が槍を構えた。湊は止めず、退路と敵の数を確認する。影獣は四体。背後の狭い水門を使えば一体ずつ相手にできる。

 四人は循環粘体を守る側へ回った。

 戦う理由は攻略報酬ではない。地上の浴槽で始まった逆流を止めなければ、熱を抱えた迷宮そのものが町の下で破裂する。

(次話へ)

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