つながらない迷宮
【本文】
翌朝、澪は約束の時刻より早く整備工場へ来た。
制服ではなく動きやすい服を着て、廃トンネルの地図と迷宮内で拾った石板を持っている。協力する理由は説明しなかった。
第一迷宮へ入ると、湊と澪の視界にだけ所有者同士の接続項目が現れた。
『短期通路』『核融合』『共同領域』
短期通路は二千ポイント、核融合は互いの核を一つにして片方の所有権を失う。共同領域は条件不足と表示された。
「融合はしない」
湊が先に言った。収容人数を増やすためでも、澪の逃げ場所を奪う選択はできない。
第一迷宮を手に入れたばかりの湊にも、所有権がただの数字ではないことは分かる。命を懸けて帰った場所を差し出せと言われれば、協力という言葉は脅迫へ変わってしまう。
澪は意外そうに湊を見る。
「あなたの家族は、五人しか入れないんでしょう」
「だから別の方法を探す」
二人が迷宮核へ同時に触れると、条件不足の詳細が開いた。共同領域には、所有者二名、迷宮三基、保有合計ポイント千以上が必要だった。
現在あるのは二基。ポイントは第一迷宮の三百十と、澪の迷宮の二十六だけ。
第三の未攻略迷宮と、最低六百六十四ポイントが必要になる。
そのときモモが核へ近づき、体内の金色を明滅させた。
『ちがう。つなぐ、こわすじゃない』
表示が一瞬乱れ、共同領域の必要ポイントが九百へ減った。モモ自身にも理由は分からないらしく、その場で力尽きるように平たくなる。
朔は表示を撮影できなかった。所有者以外には文字が映らない。
湊は残った青い結晶を核へ置いた。結晶は四十ポイントへ変換される。
第三迷宮を探すための手掛かりは、また一つ減った。
(次話へ)




