同盟ではない合意
【本文】
五通の交換後、九州側から相互支援協定の草案が届いた。
内容は救援義務ではなく、隔離槽破損、核破壊命令、M系列信号を観測した時に事実を通知するというものだった。
通信原文、変換文、判断理由は別々に保存し、後から意味を整えない。送らなかった項目も空欄ではなく《非開示》または《未確認》と記した。
群馬側は、支援不能を裏切りと扱わない、情報提供で所有権や陣営を移さない、第三者転送には再同意が必要という三条を加える。
世界の声が即時同盟、陣営登録、所有権共有を勧めても選ばない。保守信号と人間の交渉を同じものとして扱わず、一通ごとに本人性と目的を確認する。
県庁と各避難所へ共有するのは生活へ影響する結果だけとし、相手の座標や所有者情報を掲示しない。通信担当も二人交代で休息を取る。
双方が署名したのは同盟ではない。助けられない時にも、相手を敵へ変えないための小さな合意だった。
合意は七日間の試行とし、自動救援、資源供出、所有権移転を生じさせない。第三者へ転送する場合は対象文を示して再同意を取る。更新時には住民代表と設備担当がそれぞれ拒否でき、通信不能のまま期限を過ぎても敵対や破棄の責任を負わせない条文を置いた。
署名欄も所有者一名ではなく、通信、設備、住民代表の三者確認に分け、誰か一人の決断で範囲を広げられなくした。
撤回の手順も同じ紙面に記した。
返事の期限を過ぎても敵対判定せず、通信障害、生活作業、再確認の時間を残した。遠距離の相手へ、近くにいる者以上の説明義務を課さない。
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