国内最初の細い線
【本文】
群馬と九州の合意が成立した夜、壁の金色電位が安定した。
九州から地熱弁の応急復旧、群馬から二重弁の再現成功が報告される。どちらも相手の設備を支配せず、結果だけを返した。
通信原文、変換文、判断理由は別々に保存し、後から意味を整えない。送らなかった項目も空欄ではなく《非開示》または《未確認》と記した。
中央の割り込み通信は止まっていない。県庁の相馬は、所有者網を監視する命令文が評議会内で回っていると警告した。
世界の声が即時同盟、陣営登録、所有権共有を勧めても選ばない。保守信号と人間の交渉を同じものとして扱わず、一通ごとに本人性と目的を確認する。
県庁と各避難所へ共有するのは生活へ影響する結果だけとし、相手の座標や所有者情報を掲示しない。通信担当も二人交代で休息を取る。
国内最初の連絡線は強い同盟ではなく、切られないよう一日一度確かめる細い糸として残った。
地熱弁の復旧で九州の温水停止は一部解消したが、全避難所の復旧とは数えない。群馬も試験弁を実設備へ入れる前に七十二時間の耐圧確認へ回した。交信中の消費を反映し、地域食料十五日、体育館六日、旧学校七日、燃料五日。中央監視の疑いは未解決のまま残す。
その夜、第十迷宮の保存記録に北海道由来の古い検算値が再浮上した。次の照合先を急いで呼ばず、まず既存資料を読み直す。
細い線を二本目の鎖にはしない。
返事の期限を過ぎても敵対判定せず、通信障害、生活作業、再確認の時間を残した。遠距離の相手へ、近くにいる者以上の説明義務を課さない。
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