三つ目の声
【本文】
交信四日目、群馬と九州の間へ別の通信が割り込んだ。《中央承認済み所有者網。全情報を転送せよ》
形式は保守信号に似ているが、十一秒周期の末尾が一拍短い。朔は返信せず、九州側へ同じ受信記録があるか尋ねる。
通信原文、変換文、判断理由は別々に保存し、後から意味を整えない。送らなかった項目も空欄ではなく《非開示》または《未確認》と記した。
玄馬側にも届いていた。中央は両圏の交信時刻を把握している可能性がある。相馬へ照会すると、県庁には承認済み所有者網という制度はない。
世界の声が即時同盟、陣営登録、所有権共有を勧めても選ばない。保守信号と人間の交渉を同じものとして扱わず、一通ごとに本人性と目的を確認する。
県庁と各避難所へ共有するのは生活へ影響する結果だけとし、相手の座標や所有者情報を掲示しない。通信担当も二人交代で休息を取る。
第三の声が中央本人か、世界の声の偽装か、別所有者かは不明。二者の通信内容を一段階減らした。
割り込みの波形は冷たい声とも世界の声とも完全には一致しなかった。二圏は誘導質問を返さず、受信時刻だけを別経路で照合する。翌日から送信時刻を固定せず三十分ずつずらし、監視が壁信号そのものか、端末操作を見ているのかを切り分けることにした。
相馬も中央文書の発信番号を照合したが一致はなく、県庁現場を割り込みの主体とは扱わなかった。
断定は保留した。
返事の期限を過ぎても敵対判定せず、通信障害、生活作業、再確認の時間を残した。遠距離の相手へ、近くにいる者以上の説明義務を課さない。
(次話へ)




