一日一往復
【本文】
壁信号は一度に百二十文字ほどしか送れず、次の送信まで十一時間必要だった。
早く質問を重ねれば空調線の電位が上がり、旧小学校の授業を止める。通信は一日一往復、児童下校後の三十分だけと決める。
通信原文、変換文、判断理由は別々に保存し、後から意味を整えない。送らなかった項目も空欄ではなく《非開示》または《未確認》と記した。
質問票は水、食料、医療、保守音声、行政の五欄。緊急欄を使う条件も、人命危険と隔離槽破損に限定した。
世界の声が即時同盟、陣営登録、所有権共有を勧めても選ばない。保守信号と人間の交渉を同じものとして扱わず、一通ごとに本人性と目的を確認する。
県庁と各避難所へ共有するのは生活へ影響する結果だけとし、相手の座標や所有者情報を掲示しない。通信担当も二人交代で休息を取る。
遅い通信は不便だったが、返事を待つ間に確認し、言い直す余白を双方へ与えた。
送信待ちの質問は優先度順に並べ、同じ催促を重ねない。通信担当は三十分を越えたら交代し、原文の読み上げと送信操作を一人で兼ねない。緊急欄を使っても授業中はまず壁電位を落とし、児童の空調と避難導線を通信より先に守る運用にした。
未送信の文面にも作成者と保留理由を残し、翌日に担当が替わっても勝手に意味を補わない。
九州側にも同じ休止権があり、返答遅延を違反にしない。限られた百二十文字を、相手を急かす言葉で埋めないよう確認した。
返事の期限を過ぎても敵対判定せず、通信障害、生活作業、再確認の時間を残した。遠距離の相手へ、近くにいる者以上の説明義務を課さない。
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