M-00を答えない
【本文】
九州側は三度目の通信で、《M系列保守核を保持しているか》と尋ねた。
モモのM-00音声と空台座を知る者は地域網でも限られている。湊は即答せず、澪、小春、朔、代表会議へ判断を渡す。
通信原文、変換文、判断理由は別々に保存し、後から意味を整えない。送らなかった項目も空欄ではなく《非開示》または《未確認》と記した。
返答は《識別不能の旧管理信号を一度観測。生体・核・所有状況は非開示》とした。代わりに九州側もM系列を尋ねた根拠を開示するよう求める。
世界の声が即時同盟、陣営登録、所有権共有を勧めても選ばない。保守信号と人間の交渉を同じものとして扱わず、一通ごとに本人性と目的を確認する。
県庁と各避難所へ共有するのは生活へ影響する結果だけとし、相手の座標や所有者情報を掲示しない。通信担当も二人交代で休息を取る。
協力相手かもしれない者にも、患者であるモモの正体と居場所を交渉材料にはしなかった。
九州から返った根拠は、崩落区画で回収した《M系列移送禁止》という破損銘板だけだった。保守核本体も識別番号も見つかっていないという。群馬側は画像の検算値だけ受け取り、モモの診療記録を通信台帳から分離した。正体の推測より、本人の安全と同意を優先する。
モモには質問が来た事実だけを短く伝え、答えを求めない。縮んだ体を休ませる予定も変えなかった。
面会も増やさない。
返事の期限を過ぎても敵対判定せず、通信障害、生活作業、再確認の時間を残した。遠距離の相手へ、近くにいる者以上の説明義務を課さない。
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