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世界の声が鳴る前に、俺たちは十のダンジョンを攻略していた――崩壊した日本で家族を守る高校生たちの拠点防衛記  作者: 竜太郎


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西部連結圏の管理者

【本文】

 橘玄馬は、群馬から届いた無記名符号を火山灰で曇る端末越しに読んでいた。三十三歳。六基の迷宮を繋いだ西部連結圏の管理担当である。

 彼の側では三つの避難所が地熱弁の故障で温水を失い、降灰により地上浄水も止まりかけていた。群馬を助ける余裕はない。

  通信原文、変換文、判断理由は別々に保存し、後から意味を整えない。送らなかった項目も空欄ではなく《非開示》または《未確認》と記した。

 それでも血獣を倒さず封じたという記録は必要だった。九州でも冠位個体を資源として壊せという中央命令が届いている。

 世界の声が即時同盟、陣営登録、所有権共有を勧めても選ばない。保守信号と人間の交渉を同じものとして扱わず、一通ごとに本人性と目的を確認する。

  県庁と各避難所へ共有するのは生活へ影響する結果だけとし、相手の座標や所有者情報を掲示しない。通信担当も二人交代で休息を取る。

玄馬は同盟という語を使わず、《交換可能情報を提示せよ》と返した。遠くの善意ではなく、自分の避難圏を守る条件から交信を始めた。

玄馬は住民へ《同盟が見つかった》とは告げず、未知の管理圏と技術照合中だとだけ説明した。降灰除去と給水列を止めず、通信担当を二人一組にして休ませる。群馬の返答が途絶えても、救援を待って生活作業を遅らせないことを六基の責任者へ念押しした。

端末を離れた玄馬は自ら灰受けの詰まりを確認し、通信の成果を現場作業の免除にはしなかった。

 返事の期限を過ぎても敵対判定せず、通信障害、生活作業、再確認の時間を残した。遠距離の相手へ、近くにいる者以上の説明義務を課さない。

(次話へ)

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