名前を送らない自己紹介
【本文】
二度目の通信で、九州側は《西部連結圏・管理担当》とだけ名乗った。群馬側もG-17、連携避難圏、設備管理担当と返す。
所有者の氏名、正確な座標、人数、能力は送らない。代わりに管理している機能、公開可能な事故、連絡が途切れた時刻を交換する。
通信原文、変換文、判断理由は別々に保存し、後から意味を整えない。送らなかった項目も空欄ではなく《非開示》または《未確認》と記した。
九州側は浄水、地熱、保管の六基を接続し、三百人以上を複数避難所で支援しているという。数字は概数として記録する。
世界の声が即時同盟、陣営登録、所有権共有を勧めても選ばない。保守信号と人間の交渉を同じものとして扱わず、一通ごとに本人性と目的を確認する。
県庁と各避難所へ共有するのは生活へ影響する結果だけとし、相手の座標や所有者情報を掲示しない。通信担当も二人交代で休息を取る。
自己紹介は相手を信用する宣言ではなく、嘘が出た時に比較できる最初の基準になった。
三百人以上という報告も、正確な総数ではなく日々変動する概数だった。六基の地下へ全員が集まっているわけではなく、離れた避難所を設備だけで支えているという。群馬側は救援可能人数を推測せず、到着を当て込んだ配給計画も作らなかった。
こちらも地域網の空き一人を支援余力とは数えず、地上二施設の不足を伏せない。互いに《今すぐ人を送れる》とは一度も書かなかった。
返事の期限を過ぎても敵対判定せず、通信障害、生活作業、再確認の時間を残した。遠距離の相手へ、近くにいる者以上の説明義務を課さない。
(次話へ)




