壁の中の地図
【本文】
避難訓練後、朔は校庭側から反響を送り、北壁の信号経路を立体化した。
線は旧小学校から薬局の第六迷宮、病院の第七迷宮、廃駅の第十迷宮へ分岐している。通信ではなく、補助槽の封鎖状態を伝える地図に近い。
学校で見つかったことは、児童名を外して地域網、体育館、病院へ共有する。発見者を特別な能力者として登録せず、授業と休息の時間を変えない。
最も遠い線の先から、群馬県外の同じ周期が一度だけ返った。直後、九州方面を示す座標と《所有者照合要求》が表示される。
教室を調査区画だけにせず、予定していた読み書き、計算、遊びを続ける。壁の音が鳴っても、児童全員を観測当番へ集めない。
世界の声が報酬や即時解放を表示しても、地上の図面、避難経路、本人同意を先に確認する。分からない部分は推測で埋めず、次の観測時刻を決めた。
子どもが見つけた壁の声は、町の外にいる別の所有者へ続く細い線になった。
佳乃は授業記録と設備記録を別冊にし、子どもの言葉を大人向けの管理用語へ勝手に書き換えなかった。
県外線は一秒未満で消え、返信操作も表示されなかった。朔は座標を公開通信へ流さず、第十迷宮の台座記録と照合する。九州という推定も地図上の方向であり、発信者の所在地確定ではない。相馬へは所有者名を伏せ、県外保守信号を一回受信した事実だけを送った。
観測後は教室の換気、電位、児童の体調を確認し、異常がなくても記録した。発見した子だけへ褒美を与えず、参加しなかった子の遊びと学習時間も同じように守る。
子どもの原記録も封印した。
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