十八日と六十日
【本文】
農業区画の初回報告会で、最も大きな数字は収穫量ではなく時間差だった。食料十八日、最短収穫六十日。
差は四十二日。畑だけでは埋まらない。県庁便、周辺の許可済み倉庫、体育館と旧小学校の共同調理を組み合わせる必要がある。
作業表には、担当者、代行者、使用した水と電力、翌日の確認時刻を記す。働けない者の配給を減らさず、農業班だけへ補助食や権限を集めない。
湊は緊急停止担当として出席するだけで、作付けを命じない。文、千鶴、奈々、各避難所代表が土、水、配給を別々に承認する。
農業区画へ入る者は靴底を洗い、地上土と血獣粒子を混同しない。採取物には場所と時刻を付け、正体不明の土や水を広い区画へ一度に入れない。
世界の声の予測は参考記録として保存するが、地上の測定と一致するまで在庫や安全判定には使わない。失敗した区画も消さず、原因を次の畝へ渡す。
町は最初の葉を希望と呼びながら、四十二日分の不足を消さず次の計画へ進んだ。
成果を食料日数へ加えるのは、収穫し、重量と安全を確認してからとした。育っている途中の命を、帳簿だけで先に食べない。
四十二日の穴を埋める便は、燃料八日では毎日走れない。二日に一便、帰路は空車にせず、県庁の薬や土壌検査も運ぶ案にする。体育館二日分を最優先にしつつ、旧小学校や地域網の基礎配給を一方的に削らない。各施設が出せる物と必要日を更新した。
その日の終わりには、働いた人数だけでなく、休んだ人数、枯れた苗、使わなかった資材も記録した。何も増えなかった一日を失敗として隠せば、収穫予測だけが現実より先へ進む。
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