黒い斑点
【本文】
植えた種芋九個のうち二つの葉に黒い斑点が現れた。血獣の粒子か、普通の病害か判断できない。
小春は《状態観測》だけで感染名を決めず、葉、土、水を別々に採取する。血獣周期との同期はなく、湿度の高い畝だけに発生していた。
作業表には、担当者、代行者、使用した水と電力、翌日の確認時刻を記す。働けない者の配給を減らさず、農業班だけへ補助食や権限を集めない。
病株を焼かず、袋ごと隔離し、送風と水量を調整する。世界の声が《侵食作物討伐》を表示しても受領しない。
農業区画へ入る者は靴底を洗い、地上土と血獣粒子を混同しない。採取物には場所と時刻を付け、正体不明の土や水を広い区画へ一度に入れない。
世界の声の予測は参考記録として保存するが、地上の測定と一致するまで在庫や安全判定には使わない。失敗した区画も消さず、原因を次の畝へ渡す。
怪物ではない病気まで敵にすれば、畑は失敗を隠す場所になる。
成果を食料日数へ加えるのは、収穫し、重量と安全を確認してからとした。育っている途中の命を、帳簿だけで先に食べない。
隔離した病株の土は健康畝へ戻さず、第六迷宮の冷却容器で保管する。葉を切った鋏は熱湯と消毒で処理し、作業順を健康畝から病畝へ固定した。湿度を下げすぎれば他の苗が枯れるため、送風時間だけを十五分ずつ増やして経過を見た。
その日の終わりには、働いた人数だけでなく、休んだ人数、枯れた苗、使わなかった資材も記録した。何も増えなかった一日を失敗として隠せば、収穫予測だけが現実より先へ進む。
翌朝も再検査した。
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