畑へ回す水
【本文】
体育館と旧小学校の食料不足が続く中、畑へ一日三百リットルの水を使う計画が出た。
拓郎は飲用水を減らしてまで将来の作物へ回せないと反対する。奈々は井戸の洗浄用水、空調の結露、調理後の無塩水を分けて量った。
作業表には、担当者、代行者、使用した水と電力、翌日の確認時刻を記す。働けない者の配給を減らさず、農業班だけへ補助食や権限を集めない。
再利用水は病原菌と洗剤を検査し、根元だけへ点滴する。飲用可能な水は苗が枯れる緊急時にも勝手に使わず、代表承認を必要とした。
農業区画へ入る者は靴底を洗い、地上土と血獣粒子を混同しない。採取物には場所と時刻を付け、正体不明の土や水を広い区画へ一度に入れない。
世界の声の予測は参考記録として保存するが、地上の測定と一致するまで在庫や安全判定には使わない。失敗した区画も消さず、原因を次の畝へ渡す。
農業は水を増やす設備ではなく、今ある水の用途と汚れを細かく分ける仕事になった。
成果を食料日数へ加えるのは、収穫し、重量と安全を確認してからとした。育っている途中の命を、帳簿だけで先に食べない。
結露水は空調管の金属分を含む可能性があり、最初の二回は畑へ入れず検査する。調理後の水も油、塩、洗剤の有無で容器を分けた。再利用という名前だけで全てを安全にせず、使えない水は排水台帳へ戻す。運搬担当の腰と休息も水量表に加えた。
その日の終わりには、働いた人数だけでなく、休んだ人数、枯れた苗、使わなかった資材も記録した。何も増えなかった一日を失敗として隠せば、収穫予測だけが現実より先へ進む。
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