蜂のいない花
【本文】
試験区画の豆苗に花が咲いたが、実を結ぶ気配がなかった。地下には蜂も風もない。
佳乃と子ども班が筆で花粉を移す案を出す。文は子どもの成果競争にせず、一日二十分、薬品を使わない区画だけに限定した。
作業表には、担当者、代行者、使用した水と電力、翌日の確認時刻を記す。働けない者の配給を減らさず、農業班だけへ補助食や権限を集めない。
風を作る小型送風機も試すが、空調を強くすると土が乾く。筆、弱風、何もしない区画に分け、結実率を比較する。
農業区画へ入る者は靴底を洗い、地上土と血獣粒子を混同しない。採取物には場所と時刻を付け、正体不明の土や水を広い区画へ一度に入れない。
世界の声の予測は参考記録として保存するが、地上の測定と一致するまで在庫や安全判定には使わない。失敗した区画も消さず、原因を次の畝へ渡す。
花が咲いたことを収穫成功とは呼ばず、実になるため欠けている仕事を一つ見つけた。
成果を食料日数へ加えるのは、収穫し、重量と安全を確認してからとした。育っている途中の命を、帳簿だけで先に食べない。
筆は区画ごとに分け、病気や花粉を別の畝へ運ばない。子どもが休んだ日は大人が成果を埋めず、その日の受粉なしとして残す。送風機の電力は照明回路から取り、医療回路へ接続しない。花が落ちた数も失敗ではなく、結実率の分母として記録した。
その日の終わりには、働いた人数だけでなく、休んだ人数、枯れた苗、使わなかった資材も記録した。何も増えなかった一日を失敗として隠せば、収穫予測だけが現実より先へ進む。
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